「レクサス」ブランド スポーツ化へ本気のトヨタ
レクサスというブランド名を聞いて何を思い浮かべるだろうか? 高級車という漠然としたイメージはあるかもしれないが、そこにはっきりした核は存在しない。一方でレクサスが戦うプレミアム・リーグのライバルたちは、それぞれスポーツ・イメージの確立に成功している。
スポーツ・イメージを確立する競合社
リムジンのロールス・ロイスを別とすれば、高級車として最初にイメージされるのはメルセデス・ベンツだろう。AクラスやBクラスもラインナップする現在の実体を表しているかどうかは別として、パブリック・イメージとしてのベンツは高級車だ。しかし近年ではAMGのモデルを数多くラインナップに加え、高級車のイメージの他にスポーツ・イメージを押し出そうとしているように見える。 BMWはベンツのエンジンを製作する下請け会社から一大自動車メーカーになった会社だ。保守本流ベンツと正面からぶつかることを避けるために、早くから自らの製品をスポーツ・セダンに位置付けた。そのためにBMWは、傘下にBMW M GmbHというモータースポーツの専門会社を抱えて、かれらが開発したモデルでスポーツ・イメージを確立した。BMWの今日の名声にM GmbHが多大な貢献をしているのは間違いない。 アウディはクアトロの登場までブランドとしてのパブリック・イメージが無いに等しかった。現在のアウディに統合された4つの会社の中には、戦前にとんでも無い弩級のレーシングカーを作ったり、ベンツと並ぶ高級車メーカーがあったりした。しかし、敗戦後の焼け跡からやっと立ち上がったアウディにはこれと言ったパブリックイメージが存在しなかったのである。ところが1981年に突如クワトロという四輪駆動システムを搭載したラリーマシーンで活躍を始め、一瞬にしてハイテクとスポーツのイメージを獲得した。しかしながらそれだけでは普遍性が欠けたからなのだろう。この10年ほどは都会派クールデザインをメインに押し出そうとしているようだ。 自動車の定義を自ら作ったとするベンツは別にして、後発のBMWもアウディもモータースポーツをきっかけにブランドイメージが構築されている。そして保守本流で王道を行くだけに見えたベンツまでがスポーツ・イメージを獲得しようとしているのだ。「プレミアムリーグにはスポーツイメージが不可欠」と踏んだのかどうかは定かではないが、トヨタは今、レクサスのブランド・イメージに「スポーツ」という単語をタグ付けしようとしているのだ。