「老後の生活に1億円かかる!」は本当か?
「老後の生活には1億円かかる!」老後の生活についてマネー誌などで特集が組まれる場合、いつも出てくるのがこのフレーズです。正直言ってこの「1億円」という金額を聞いてショックに感じた人も多いのではないでしょうか? これについては「その通りだ」という人もいれば、「いや、そんなに必要はない」という人もいます。どちらが正しいのでしょうか? 最初から答えを言ってしまいますと、どちらも正しいのです。なぜなら、どんな生活をおくるかによって老後にかかる費用というのは全く違ってくるからです。少し整理して考えてみましょう。
”1億円かかる”の根拠はどこから?
そもそも「老後に1億円かかる」という計算の根拠は一体どこから来ているのでしょう。公益財団法人 生命保険文化センターというところが「生活保障に関する調査」というのを3年ごとにやっていますが、その中で「ゆとりある老後生活費」という項目があります。 2013年に行われた面接調査によれば、ゆとりある老後生活費の平均は月35.4万円となっています。この金額で25年間(65歳~90歳)生活すれば、確かに1億円ちょっとかかります。おそらくこの数字の根拠はこの辺りから来ているのでしょう。 ところが、公的年金でサラリーマン夫婦二人の場合の平均的な受給額と言われる約22万円の範囲内で生活できれば6600万円ぐらいになります。事実、私は会社を退職して4年になりますが、日常の生活費は妻と2人で20万円もあれば十分足ります。逆に月50万円でリッチな生活をするなら1億円どころかその1.5倍の1億5000万円ぐらいかかります。つまり生活ぶりによって1億円は正しいとも言えるし、正しくないとも言えるのです。 たとえば「子どもを大学に行かせるといくらぐらいかかるの?」と人に聞いて「大学4年間で2000万円かかるよ」と言われた場合、まだ子どもが小さい人なら「そうか」と思うかもしれません。でも子どもを大学に行かせたことのある人であれば「え、それは違うでしょ。国立か私立で違うし、文系か理系かでも全然違うよ」と言うはずです。それはその通りで一律にいくらかかるということは言えません。 これはある意味あたり前です。ところがこのあたり前のことが、老後の暮らしになるとなぜか誰もが思考停止に陥ってしまって“1億円”と言われるとすぐに信じこみ、その金額に恐れ、驚いてしまうのです。この理由は前回もお話ししたように経験したことがないことからくる不安にあるのだろうと思います。