「年収の壁」引き上げ「178万円」要求へ どうするべき国民民主、維新と結託も一つの手 ハイリスク・ハイリターンの選択肢も
【日本の解き方】 「年収103万円の壁」引き上げについて、与党税制改正大綱で「123万円」と明記された。「178万円」を要求している国民民主党としては今後、どんな手段があり得るのか。 【表でみる】控除額を178万円に引き上げた場合の年収別減税額 少し前の本コラムで「財務省と自民税調の〝悪だくみ〟減税圧縮・穴埋め増税 野党分断で予算修正阻止 足並み乱れた間隙狙い…特定野党に便宜も」と書いた。地上波の番組では、「3党幹事長間の合意文書は「紙」だから破れる」という不吉な予想を言い、当たってしまった。結果的に、冒頭のように与党税制改正大綱では「123万円」となった。 その背景には、日本維新の会の存在がある。財務省と自民党の税制調査会は、維新と国民民主党を両天秤(てんびん)にかけ、どちらかが予算に賛成してくれればいいという状況になっている。実際、補正予算案には両党が賛成し、キャスチングボートを握るのは国民民主だけではなくなっている。 これは、ゲーム理論における「非協力ゲーム」の状況だ。「協力ゲーム」と「非協力ゲーム」の区別は、ノーベル経済学賞を受賞した数学者ジョン・ナッシュ氏が1951年に提唱した。ナッシュ氏によれば、「協力ゲーム」においてプレーヤー間のコミュニケーションが可能であり拘束力を持つ合意ができるのに対して、「非協力ゲーム」においてはプレーヤーがコミュニケーションをとることができず、拘束力のある合意ができない。 まさに、財務省・自民党、維新、国民民主党はその関係だ。維新と国民民主党は結託できず、財務省・自民党に弄(もてあそ)ばれている。結託できない場合、1回であれば財務省・自民税調は両者の要求をのまないで予算を通すこともできるが、今回は補正予算と来年度予算の2回をうまく通さなければいけない。となると、対処が手軽な相手に便益を与えて乗り切ろうとする。いうまでもなく維新だ。 維新が掲げる「教育無償化」は、補助金タイプの政策であり、将来は増税もあり得るので、財務省も受け入れ可能なものだ。一方、国民民主党の「年収の壁引き上げ」は減税政策だ。財務省にとっては過去30年間にわたり主張してきた「減税は効果がない」というウソがバレかねず、受け入れ難い。 ここで、国民民主党の手としては、維新と互いに「抜け駆けしない」と結託するのがセオリーだ。そうなると、ともに欲しいものが手に入る。