導入からほぼ半世紀、「指名打者制」を取り入れるリーグ、取り入れないリーグ
この「ユニバーサルDH制」の恩恵をこうむったのが大谷翔平だ。投手と打者の二刀流の大谷は、投げない日には指名打者で出場する。2022年まではDH制のないナ・リーグに移籍することは考えられなかったが「ユニバーサルDH」の導入によって、ナ・リーグのロサンゼルス・ドジャースに移籍したのだ。 セントラル・リーグが48年前に掲げた「指名打者制を導入しない理由」の大半は説得力がなくなっている。 この間に多くの野球ファンは「指名打者制」を十分に理解するようになった。 また指名打者制になってから「ビーンボールが増えた」という事実はない。NPBは1982年に「危険球退場」の制度を設け、頭部付近に死球を与えた投手は一発退場することとなり、ビーンボールへの抑止力となっている。 この間に、投手における「先発、救援」の分業も進み、セ・パ両リーグで完投する投手は激減している。 バント数も2023年で言えばセの608個に対してパが605個と差がついていない。 ただ「代打」は、2023年でいえばDH制のないセ・リーグが1624打数に対しパ・リーグは837打数とセのほうが多い。投手に代打を送る必要がない分、DH制があるリーグのほうが代打の起用数が少なくなるのだ。
投手の打撃が進化するはずだが
「指名打者制」を導入しないのならば、投手の「打撃成績」が向上してよいはずだが、1975年のセ・リーグの投手の打率がトータルで.139、9本塁打、92打点だったのが、2023年は打率.116、2本塁打、62打点とスケールダウンしている。そして三振率は33.8%から46.2%と増加している。 打席に立っているにもかかわらず、投手は以前より「打撃に参加する意欲」を失っていると考えられる。「投手が打席に立ち、不得意な打撃で奮闘することで『意外性のあるドラマ』が生まれる。これも野球の魅力だ」というファンも多いが、多くの投手はそう思っていないようだ。 さらに言えば、大谷翔平の「二刀流」は「指名打者制」を導入しているパ・リーグでこそ成立したと言える。セ・リーグでは大谷は投手ではなく打者で出場するときは、内外野のポジションを守らざるを得ず、その負担と怪我のリスクを考えれば「二刀流」は不可能だっただろう。「打つだけ」に専念できる「指名打者制」が、大谷の「二刀流」を成立させたと言えよう。 巨人の原辰徳前監督は「セ・リーグにもDH制を」、という提案をしているが、他球団の支持を得ることができず、見送られている。