導入からほぼ半世紀、「指名打者制」を取り入れるリーグ、取り入れないリーグ
指名打者制に反対する理由
しかし一方で「指名打者」には反対意見も多い。1975年にNPBのパ・リーグが指名打者を導入した際にはセ・リーグは9か条の「指名打者制に反対する理由」を掲げた。 1.1世紀半になろうとする野球の伝統を、あまりにも根本的にくつがえしすぎる。 2.投手に代打を出す時期と人選は野球戦術の中心であり、その面白みをなくしてしまう。 3.投手も攻撃に参加するという考え方をなくしてしまう。 4.DH制のルールがややこしくファンに混乱をおこさせる。 5.ベーブ・ルースやスタン・ミュージアルは投手から野手にかわって成功したのだが、そのような例がなくなる 6.仕返しの恐れがないので、投手が平気でビーンボールを投げる。 7.いい投手は完投するので得点力は大して上がらない。 8.投手成績、打撃成績の比較が無意味になる。 9.バントが少なくなり野球の醍醐味がなくなる。 しかし、DH制は半世紀以上の時間を経て、世界中の多くの野球で取り入れられえている。 その理由として ・もう一人選手をレギュラーで起用することができる ・好投している投手に代打を送って降板させなくて済む ・打線が投手で途切れることがなくなり、攻撃的な野球が増えた ・最も運動量が多い投手に休息の時間を与えることができる ・守備は苦手だが打撃が得意な選手の活躍の機会が増えた などがあげられる。 また1997年からMLBではア・ナ両リーグのチームが対戦する「インターリーグ」が始まった。NPBでも2005年からセ・パ両リーグによる「交流戦」が始まったが、いずれも「指名打者」のあるア・リーグ、パ・リーグが勝ち越している。
世界の野球界はDH制に
今や、世界の野球の趨勢は「指名打者あり」に大きく傾いている。 韓国プロ野球(KBO)と台湾プロ野球(CPBL)では指名打者制を導入している。 また、日本の大学野球も東京六大学と関西学生野球連盟、そして神宮大会を除いて指名打者制を導入した。高校野球はDH制を敷いていないが少年野球にはDH制を導入している団体がある。 また世界のアマチュア野球、少年野球でもDH制の導入が相次いでいる。 そしてついに、2023年からはMLBのナショナル・リーグも指名打者制を導入した。MLBはこれを「ユニバーサルDH」と言っている。これは導入から半世紀を過ぎて、野球ファンに指名打者制が十分に浸透したことが大きいとされる。