発達障害の人が「職場定着」するために企業ができること。「合理的配慮」とは何か
3ヵ月間の「トライアル雇用」制度も活用できる
特性への理解や配慮を得るために「トライアル雇用」を利用します。3 ヵ月間の試行雇用期間に、働き方などを職場側と確認・調整するという公的な支援制度です。職場実習・職場体験とは違い、企業に通い、実際の仕事をして賃金を受けとります。 ■職場実習 企業が求職者などに、仕事の実習の機会を提供すること。求職者は実際の仕事と同じ作業を体験でき、自分の適性などを把握できる。雇用契約ではなく、賃金は支払われない。 ■職場体験 企業が学生などに職場を公開し、体験の機会を提供すること。実際の仕事というよりは、簡易的な体験になることが多い。雇用契約ではなく、賃金は支払われない。 ■トライアル雇用 企業が労働者を原則として3ヵ月間、試行的に雇用する制度。有期雇用となり、賃金が支払われる。企業は期間中に労働者の適性などを確認し、問題がなければ継続雇用する。 3ヵ月間のトライアル期間をもうけることで、本人と企業それぞれが、業務の調整など、職場環境の整備をじっくりと進めていけます。 職場側には、準備の時間をとれることに加えて、一定の要件を満たせば助成金が支給 されるというメリットもあります。
感覚過敏などへの「合理的配慮」を相談する
障害がある人は、感覚過敏などの生活上の支障について、職場で「合理的配慮」を受けることができます。企業・支援者と相談しましょう。 ■合理的配慮 生活のなかで障害や社会的な障壁を感じる人が、配慮を必要としたときに、役所や企業などの事業者が、負担が重くなりすぎない範囲で配慮をすること。国連の障害者権利条約や日本の障害者差別解消法などで定義されている。 ・「 障害や社会的な障壁がある人」が対象となる。障害者手帳の有無は問わない ・企業などの事業者は、従業員に対して合理的配慮をする法的義務がある 感覚過敏などの支障が合理的配慮によって解消されれば、本人のストレスは大きく軽減されます。業務の調整とは別に、障害による苦痛の軽減をはかることも重要です。 職場への効果としては、本人の感じている苦痛を理解し、その軽減に協力できるという効果があります。結果として、従業員に働きやすい環境を提供することにつながります。 ■安心して働ける 合理的配慮を受けることができれば、仕事中のストレスが軽減され、安心して働ける
梅永 雄二(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)