人口減の小豆島は「日本の縮図」 自動運転バスやAIボート…社会問題解決へ大型実証実験
■「期待感は想像以上」
特に地域住民と観光客の双方にとって島内交通は大きな課題。タクシーは約30台、路線バスは場所によって1時間に1本程度で、繁忙期やイベント開催時には観光客増加による混雑や交通渋滞の発生など、オーバーツーリズムが懸念される。
高島さんは「根本的な原因は人手不足にあり、人口減少のため解消できない部分をテクノロジーで解決する」と強調する。
自動運転EVバスの実証実験では、土庄港~エンジェルロードの片道約2・7キロ、所要約10分のコースを、自動運転レベル2(部分運転自動化)で1日7往復した。オペレーターが運転席に座り時速35キロの設定で走行。車載のセンサー8基で周囲の道路状況を検知し、3Dマップに基づいて発進、停止、右左折などを自動制御。期間中の自動運転比率は96%だった。
期間中の利用者数は約580人。無料、先着順利用のため満席で乗れない便もあった。利用者アンケートでは、96%が今後も自動運転の利用を希望と回答した。高島さんは「安全性への懸念はあるが、待ったなしの課題解消への期待感は想像以上」と手応えを語る。
■「先進地域にしたい」
国土交通省は令和7年度をめどに50カ所程度、9年度100カ所以上での自動運転移動サービス実現を目標に掲げる。
実証実験に協力した自動運転運営事業者の「BOLDLY」(東京)は各地で160回以上の実証実験を行い、昨年までに10カ所で実用化を実現している。担当者は「0から5のレベルのうち、小豆島では9年度に公道でのレベル4(高度運転自動化)、将来的な社会実装を目指す」と話す。
また、プロジェクトに参画している東京のITベンチャー「scheme verge(スキームヴァージ)」の担当者も「新技術導入のリスクはあるが、観光への備えが十分でないという危機意識の方が強い。『モビリティーアイランド』と呼ばれるほどの先進地域にしたい」と意気込む。
また、AIが船の制御や障害物の検知をして自動で航路設定を行うAI自動運転ボートの航行実証では、観光スポットと島内の港を結ぶ3ルートを1日1便運航した。
高島さんは「高いランニングコストという課題は見えたが、将来的なビジネスチャンスは十分。ホテルの送迎サービスへの導入も検討する。さまざまな事業者や投資が集まる『イノベーションアイランド』を目指せば、人口流出の歯止めにもつながる」と説明。「20年先を見据えて人口減少による課題の解決策が確立できれば、未来の日本の処方箋にもなり得る」と期待を寄せている。(和田基宏)