いろいろな種類があるお墓や供養の特徴を整理し、実家のお墓を決める
<連載> 今すぐできる終活講座 実家とお墓③
終活や遺贈の専門家である齋藤弘道さんは現在、健在の父親のお墓を探しています。前回は、お墓探しをする前に、両親の終(つい)のすみかの候補として、さまざまなタイプの老人ホームの特徴を把握しました。今回は納得のいくお墓探しをするために、お墓や供養の種類を整理します。
通いにくいお墓の候補地
実家から約2km離れたお墓の候補地は、道のりの途中に大きな川を渡る橋があり、風が強く高低差もあります。私の父が自動車運転免許証を返納する予定であることから、父母のどちらか一方が亡くなったときのことも考えると「シニアカー」や「電動カート」と呼ばれる高齢者向け電動車両で行くのには無理があり、父のお墓探しの話はいったん棚上げになっていました。
お墓の種類は多岐にわたる
そこで、そもそもお墓にはどのような種類があり、どのような選択肢が考えられるのかを整理することになりました。調べてみると、運営主体や経営主体を含め、お墓にもいろいろな種類があることがわかりました。 1.運営主体別(埋葬する墓地の場所) (1)公営墓地 公営墓地は自治体が管理運営する墓地で、費用が比較的安く、宗旨や宗派を問わないという利点から申し込みが多く、抽選になることもあります。申し込みに際しては、その自治体に住所があり、すでに遺骨を持っているなどの条件があります。 (2)民営墓地 民営墓地は宗教法人や民間企業が運営する墓地です。購入にあたっての条件はほとんどありませんが、墓石の購入や工事がその墓園が指定する石材店になっていることが多いようです。 (3)寺院墓地 寺院墓地は宗教法人(お寺)が管理する墓地です。寺院の墓地経営は宗教活動の一環として考えられています。原則として、お墓を建てるにはそのお寺の檀家になる必要があります。つまり、その寺院に所属し、お布施や会費を払うことで寺院を経済的に支えなければなりません。 (4)みなし墓地 みなし墓地は昔からある墓地です。その多くは墓地、埋葬等に関する法律が改正される前に建てられた村墓地、共同墓地、個人墓地です。その土地や一族に関係する人のための墓地であり、2023年(令和5年)9月に発表された総務省の墓地行政に関する調査によると、この形態が最も多くなっています。 2.お墓や供養のスタイル別 (1)一般墓地 一般墓地は従来型のお墓です。区画された墓地に墓石が建っています。多くのは「家」単位で利用しますが、少子化とともに主に二つの「家名」を並べる両家墓(りょうけぼ)も増えています。 (2)納骨堂 納骨堂は霊園や寺院の建物内に遺骨を保管する形式のお墓です。その種類は多様で、「ロッカー式」「マンション式」「棚式」「位牌式」「仏壇式」「自動搬送式」などがあります。 (3)樹木葬 樹木葬は樹木を墓標に見立てて、その下に遺骨を埋葬するお墓です。シンボルツリーの周りに多くの区画をつくり、遺骨を安置する形式が一般的です。 (4)永代供養墓 霊園や寺院が永代にわたって遺骨を管理したり供養したりしてもらえるお墓です。お墓の承継者は不要です。個別安置型、集合安置型、合祀型などがあります。 (5)散骨 お墓を持たない、供養のスタイルです。海や川、または山などに遺骨をまく方法ですが、遺骨の一部を手元供養することも可能です。その方法には、委託散骨、合同散骨、個人散骨があります。また、空中散骨や宇宙散骨もあります。 3.埋葬される人別 (1)家墓(いえはか)/累代墓(るいだいぼ) 伝統的なスタイルのお墓です。墓石には「○○家」「○○家先祖代々之墓」や「南無阿弥陀仏」などと記されます。親から子へ、子から孫へ引き継がれることを前提としています。 (2)両家墓(りょうけぼ) 姓の異なる親族も一緒に埋葬するお墓です。夫婦が両家の墓を同じ場所で管理するケースや、跡継ぎが他家に嫁いだ女性であるケースなどがあります。 (3)個人墓 一人だけ埋葬されるお墓です。先祖から守り続けるのではなく、自分だけで、承継者も必要としない個人的で自由なお墓です。 (4)夫婦墓 一族とは別に夫婦だけで入るお墓です。子どもがいない夫婦で、再婚や複雑な家族関係がある場合などに選択される傾向にあります。 (5)共同墓 同じ趣味や信仰を持つ人たちが一緒に埋葬されるお墓です。独居老人同士が無縁仏にならないように利用するケースもあるそうです。