エアコン室外機の盗難急増、レアメタルや銅狙ったか…荒々しく切断された配管に「鉢合わせたらと思うとぞっとする」
住宅や公共施設に外付けされたエアコンの室外機や給湯器といった金属製品を狙った窃盗が茨城県内で相次いでいる。金属買い取り業者に売りさばく目的で盗まれているとみられ、背景には金属価格の高騰がある。県警は取り締まりを強化し、対策や注意を呼びかけている。(寺倉岳) 【写真】室外機の盗難現場に設置された防犯カメラ
田畑や空き地に囲まれた神栖市溝口の「夢グループ神栖サービスセンター」。かつては温浴施設で、現在は倉庫やコールセンターとして使われる建物で、11月14日に8台のエアコン室外機が盗まれた。7月にも2台盗まれており、被害は2度目だ。
配管が刃物で荒々しく切断され、室外機が丸ごと持ち去られた犯行現場。「従業員と犯人が鉢合わせになっていたらと思うと、ぞっとする」と、夢グループの石田重広社長(66)が顔をしかめた。「闇バイト」など物騒な事件が相次いでいることも気がかりで、室外機の再設置はせずに防犯カメラやセンサーライトを複数取り付けたという。
それでも、数台の室外機が残っている。施設で働く従業員男性(59)は「犯人はまた盗みに来るだろう」と不安を口にする。事件後、夜は2人以上で行動することを徹底し、夜間も施設の電気をつけたままにしているという。
県警によると、室外機を対象とする窃盗事件は今年に急増。1月は0件だったが、その後は右肩上がりで増え、ピークの7月は75件に達し、10月末現在で計470件を数える。県北地域を除き、県内全域で多発しているという。
複数の捜査関係者によると、室外機には希少とされるレアメタルのほか、近年は特に価格が高騰している銅も使われており、室外機一つで4000~5000円の価値で売りさばかれるケースもある。犯行の多くは単独で行われ、人目に付かない空き家や夜間が狙われやすい。
県警は手をこまねいてはいない。今月までに稲敷署は、消防団車庫からエアコンの室外機を盗んだとして、阿見町の男を窃盗容疑で逮捕。鹿嶋と神栖署の合同捜査班も、別荘から給湯器を盗み、偽名で売りさばいたなどとして、自称神栖市の男を窃盗などの容疑で逮捕した。いずれの事件も余罪や関連事件への関与について捜査が進んでいる。
事業者や住民らの周知にも力を注ぐ。防犯カメラやセンサーライトを設置したり、室外機を固定して運び出せないようにしたりするよう勧めており、県警幹部は「犯人が防犯対策に気づけば、盗まれにくい。さらに映像があれば検挙につながりやすい」と話す。