第1次トランプ政権、米朝戦争に備えた極秘計画が明らかに
CIA準軍事部門は、北朝鮮有事に備えた独自の緊急対策計画を調査
CIAの準軍事部門「特別行動センター(SAC)」の統括で行われた2017年の計画改訂は幸先の悪いスタートだった。まずCIAは在韓米軍特殊作戦司令部(SOCKOR)の職員に連絡を取った。米朝戦争の勃発に場合に備え、CIA準軍事部門をはじめとする特殊作戦部隊を交えた戦争計画を策定したのがSOCKORだった。 だが元CIA高官によると、いざSOCKORの計画を見直したCIA準軍事部門の面々は「驚愕した」という。何十年もまったくほったらかしだったのだ。SOCKORの立案者はCIA職員に計画のことを口にしたことすらしなかった。 さらに最悪なことに、計画は「どこから見てもバカげていた」と元CIA高官は振り返る。「『それじゃあCIAから3人同行させて一緒に戦車で乗り込むか』という感じでした。ふざけるな、と思いましたね。実際そういうわけにはいきません。誰がこんなの考えたんだ、『ルーニー・トゥーンズ』のワイリー・コヨーテか? というような計画でした」。 SOCKORの上層部に話を聞いても、CIAの不安はまったく払拭されなかった。「将軍の1人に話をしたところ、『とにかくまずは……北朝鮮の山岳民族と合流しよう。山岳民族は平壌市民と仲が悪いからな』と言われました」と、元CIA高官は当時を振り返った。 「なので言ってやりました、マカロニ・ウェスタン映画じゃないんだぞ……北朝鮮の山賊と連携して平壌に乗り込めばいい、なんていう希望的観測に基づいた戦争計画なんか立ててる場合じゃない」と元CIA高官。「まるで無謀な博打ですよ。ラスベガスくんだりに繰り出して、奥さんの金を全額賭けるような真似はしたくないでしょう」。 軍が策定した計画にはまともなものもあったが、大半はまるで「マティーニを飲み過ぎた」末にできあがった代物だった、と元高官は語った。 CIA準軍事部門は、北朝鮮有事に備えた独自の緊急対策計画――元高官が言うところの「極秘中の極秘計画」――についても公開調査とテコ入れを行った。 元高官によると、CIAの計画も長年手つかずのままで埃をかぶっていた。「万が一の際にはガラスの箱を叩き割って書類を開け、そこに作戦が書いてある」というのがCIA本部の姿勢だったと元高官は述懐する。だがこちらの計画も内容的にはずいぶん時代遅れだった――あるいは元高官の言葉を借りれば、単純に「意味不明だった」。 元高官によると、北朝鮮計画の改訂を行った担当者は、これら時代錯誤の緊急事態対策を刷新し、非常時の通信などの諸問題に対応した有効な戦時計画に改編しようとした。 だが一部の人々の目には、改訂されたCIAの北朝鮮計画もやはりバカげて見えた。「朝鮮情勢はおかしくなってましたね」と語る元CIAの契約職員は、当時CIAのSACから出された「奇妙な計画の数々」を振り返った。計画の大半は北朝鮮国内のトンネルや地下施設への侵入に集中していた。そのうちいくつかは、「『たしかに部隊の80%は戦死するだろうが、4人ぐらいは突破できるんじゃないか』みたいな感じでした。ふざけるなって思いますよね」。 地下施設に関する情報は収集が極めて困難なため――衛星画像やドローンでは、という意味だが――「奇妙な」代替案が絶えず持ち上がっていたと元CIA契約職員は言う。例えば訓練した犬を地下に送り込み、侵攻の際に米軍工作員とともに偵察などの作戦を遂行する、などだ。「犬はどのぐらいの重量を運べるのか? 弾薬は運べるか?というような内容でした。犬に(暗視)ゴーグルをつけてはどうかという案もあったと思います。『どうかしてる、老犬の跡をつけて行けと言う気か?』と思いましたよ」。