ハイソカーの象徴マークIIの後継、トヨタ「マークX」が245.7万円~デビュー【今日は何の日?11月9日】
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日11月9日は、1980年代にスポーティな高級セダンとして“ハイソカーブーム”をけん引した「マークII」の後継車として「マークX」が誕生した日だ。1990年初頭のバブル崩壊とともにセダン市場は冬の時代に突入、マークIIに代わってセダン復活のために登場したのがマークXだった。 TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・マークXのすべて、新型マークXのすべて、歴代マークIIのすべて ■マークIIの低迷を受け、セダン復活の使命を担ったマークX トヨタ・マークXの詳しい記事を見る 2004(平成16)年11月9日、トヨタのアッパーミドルの高級セダン「マークX」がデビューした。1980年代に一世を風靡した「マークII」の人気も1990年半ば以降は低迷、セダンの人気挽回のためユーザーの若返りを狙ったマークXが登場したのだ。 ハイソカーブームをけん引したマークIIの栄枯盛衰 ・初代~3代目マークII:コロナの上級モデルとして大型化 高級化マークIIは、1968年にコロナの最上級車種として、コロナとクラウンの中間のアッパーミドルセダンとして誕生。1972年の2代目は、大きくより上級化して直4エンジンに加えて2.0L直6エンジンも設定。1976年の3代目は、ヨーロピアン調の優雅な雰囲気へと変貌し、フラッグシップのグランデには2.6L直6エンジンが搭載された。 ・4代目~6代目マークII:ハイソカーブームをけん引して大ヒット 1980年に登場した4代目は、直線基調のデザインに変わり、以降マークIIを特徴づけたピラードハードトップが人気を獲得。またマークII初のターボエンジンを搭載したグランデターボが登場して走りにも磨きがかかった。 1984年には、5代目にモデルチェンジ。この頃から、スポーティな高級セダン“ハイソカー(ハイソサエティカー)”という和製英語が生まれて、マークIIはそれを代表するクルマとなった。1985年には月販台数は1万2000台を超え、その後2万台を超える空前の大ヒットを記録した。 1988年に登場した6代目は、バブル好景気と重なり、装備の高級感に加えてパワートレインも多彩になり、スーパーチャージャーやツインターボ、スポーツツインカムを設定したバブリーなモデルだった。バブルの勢いもあり、歴代マークIIの中で最も多い販売台数を記録した。 ・7代目~9代目マークII:バブル崩壊がトリガーとなり人気は低迷 1992年に登場した7代目は、3ナンバーボディとなって先代を凌ぐ高級感と高性能を図った。しかし、発売は不幸にもバブル崩壊時期と重なり、この頃からマークIIの躍進に陰りが見え始めた。1996年にはベーシックなセダンらしさを追求した8代目に移行したが、この頃には高級セダン市場は完全に冷え込み、販売低迷に歯止めをかけることはできなかった。そして2000年には、最後の世代となった9代目にバトンが渡されたが、かつての輝きは消失して、マークIIブランドは幕を下ろしたのだ。 ユーザーの若返りによってセダン復活を図ったマークX 2004年11月のこの日、トヨタはアッパーミドルの高級セダンの復権を目指して、マークIIに代わる新世代セダンのマークXを市場に投入した。そのネーミングは、将来への期待と可能性を込めて数学で未知数を意味する”X”を採用。また初代マークIIからカウントすると、10代目(Xはローマ数字で10)に相当するからとされている。 ターゲットユーザーは、マークIIよりも一世代若い40歳代半ばから50歳代半ばに引き下げられ、ユーザーの若返りを狙った。クラウンと同じプラットフォームを使いながら、全長は110mm、全幅と全高は5mm短縮され、最大の特徴はフロントフードを長くしたスポーティなフォルムである。 エンジンは、最高出力215psを発揮する2.5L&256psの3.0L DOHCでいずれも長年採用してきた直6からV6へ変更、トランスミッションは6速ATおよび5速ATを設定。これは、2003年発売の12代目「クラウン」と同じ仕様だが、マークXの方がボディは軽いので、当然ながらマークXの方が軽快でスポーティな走りが楽しめた。 車両価格は、2.5L仕様で245.7万~308.7万円。当時の大卒初任給は19.7万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で287万~360万円に相当する。デビュー当初のマークXの販売台数は目標を上回り、セダンとしては好調な滑り出しを見せた。 マークXもミニバン&SUV人気に押されて終焉 順調に滑り出したマークXも、ミニバンとSUVが人気を加速する中でセダン市場はさらに縮小し、マークXの販売も徐々に低迷した。 その後、2009年のモデルチェンジによって2代目へと移行して商品力の強化を実施。車両価格は先代より10万円程度安価に設定されたが、それでも歯止めはかからず、2018年の年間販売台数は4000台程度まで落ち込んでしまった。 ユーザーの若返りを図った新世代セダンのマークXだったが、セダン低雌の歯止めをかけることはできず、デビューから15年を迎えた2019年末に生産を終えた。 ・・・・・・・・・ 最近の日本市場では、安全性や乗り心地、静粛性に優れているセダンよりも、多くの人や荷物が運べて、どこでも行ける多様性に対応できるミニバンやSUVのようなクルマが好まれている。今やセダンは大衆車でなく、特別なクルマになってしまったのだ。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純