パウエル議長のタカ派転換始まったばかり-6万件のヘッドライン示す
金融当局は実際に政策を転換することはなく、FF金利の誘導目標レンジに変化はないが、パウエル議長の発言内容が変わり、それが重要なシグナルを発した。
Fedspeak指数は当局者発言のヘッドラインを「超タカ派的」から「超ハト派的」までの尺度で数値化するが、12月の議長発言を受けて指数はハト派に傾斜し、当局が最初の利下げ実施に顕著に近づいたことが示された。
市場および経済にとって、パウエル議長の発言は重要な意味を持つ。従来の想定よりも早期の利下げを予想し、米2年債利回りは12月13日の議長記者会見の前日時点の4.7%から、今年1月半ばには4.1%にまで低下した。こうした借り入れコスト低下の影響と、株価の上昇は経済全体に波及し、成長への新たな刺激となった。
パウエル議長の12月のハト派転換のサプライズがなかった場合、どうなっていたか確度をもって言い当てるのは不可能だが、米経済はリセッションに向かっていただろうというのがBEの見方だ。
パウエル議長のハト派転換は絶妙なタイミングで行われ、景気の下降スパイラルを防ぐのに十分な威力があった。残念ながら、そのつけを今払わなければならない。成長加速はインフレ加速を意味する。BEは、議長のハト派転換によってインフレ率が1年間に約0.5ポイント上乗せとなった可能性があると推計する。
歴史的評価
歴史的評価を意識するFRB議長にとって、避けるべき手本は1970年代の狂乱物価を招いたとして非難されたアーサー・バーンズ氏の例だ。12月のハト派転換で米経済をソフトランディング(軟着陸)の道筋に保つことができたのはメリットだが、成長加速でインフレも再燃させることで、パウエル議長の名声が傷つく恐れがある。
議長がタカ派姿勢に転換し始めたのは恐らくこうした背景があるからだろう。議長は4月16日のパネル討論会で、「最近のデータがわれわれの確信を深めるものでないことは明らかだ」とし、金融当局は「必要な限り」金利を据え置くことが可能だと語った。