パウエル議長のタカ派転換始まったばかり-6万件のヘッドライン示す
オバマ政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたジェイソン・ファーマン氏はGDP統計について、「経済の実体面は非常に健全である一方、名目面は過熱しているというのが結論だ」とソーシャルメディアに投稿した。
1年前の予想が外れたのには三つの説明が考えられる。まず現代貨幣理論(MMT)の提唱者が指摘するのは、金利上昇が消費者の所得を押し上げているという説だ。それが正しいとすれば、米利上げは成長の重しではなく推進力であり、インフレ抑制のための答えは利下げということになる。
FRB利上げ、むしろ景気の追い風だとしたら-逆張り論理に脚光
これは市場の関心を引く刺激的なアイデアだが、理論的にもデータによっても裏付けは困難だ。
2番目の可能性は米経済の潜在成長率と、インフレ抑制に必要な金利水準がいずれも上昇したというものだ。クリーブランド連銀のメスター総裁は3月、主要政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の中立水準が「上昇した可能性がある」との見解を示した。
実際にそうだとすれば、米金融当局が22年3月から23年7月まで進めた計5.25ポイントの利上げではインフレ抑制に不十分で、追加利上げが必要ということになる。
理論的にはこうした可能性はあるだろう。米国には過去3年間に何百万人もの移民の流入があり、労働力人口の増加につながるのは確かだ。バイデン大統領の産業政策は米製造業の再興を目指したものであり、人工知能(AI)など新技術は生産性の大幅向上が期待される。
しかし、実際のデータ面でこのアイデアを支えるものはほとんど見当たらない。移民が労働力に組み入れられるには時間がかかる。また、投資の伸びはトレンドを下回っており、AI主導の生産性急上昇は事実というよりもSFの領域にとどまっている。
このため、BEが最有力視するのは、パウエル議長による昨年12月のハト派転換という3番目の説明だ。
パウエル議長は12月のFOMC会合後の記者会見で、極めてハト派的なトーンを打ち出した。議長は利下げの条件について議論したと認め、行動するためにはインフレ率が2%に達するのを待つ必要がないとし、市場にサプライズをもたらした。