「全然取れると思ってなかった」第168回直木賞の千早茜さん会見(全文)
どういう作品を書いていきたいか
記者:もう本当に最初読んだだけですぐ分かるとおっしゃってましたけれども、そういった独自の文章力というのはどうやって培ってこられましたか。 千早:どうなんでしょうね。私は私以外の文章の書き方を知らないので、なんともそこは言えないですね。自然にというか。ただ、やっぱり五感、そうですね、小説は紙に書かれた、ただの、色もにおいもない、ただの文字ですけど、そこからにおいとか肌触りとかが立ち上ってくるようなものを書ければいいなっていうふうにはいつも思っております。 記者:ありがとうございます。あと、事前取材のときに、有名な人よりも名前のない人を書くことに魅力を感じるというふうにおっしゃっていましたけれども、これから直木賞作家と呼ばれていく中で、あらためまして、どういう作品を書いていきたいというか、ということを教えてください。 千早:そんなに変わらないと思います。あんまり、そうですね。今回、初めての歴史小説だったんですね。でもやっぱり、歴史小説を書く上でも現代小説と同じように、現代小説を書くときも別に私、有名人の話を書いてるわけではないので、普通に一般の中で生きている市井の人間の苦しみとか悲しみとか生きがいとか感情とかを書きたいなと思っているので、そこは時代劇でも変わらないなと思ってこういう書き方をしたんですけど、このような評価をいただけて、とても自信に思ってます。なので、これからもそういうものは変わらず書いていきたいなと思っています。 記者:分かりました。ありがとうございます。おめでとうございます。 千早:はい、ありがとうございます。 司会:次の方。はい、じゃあニコニコさん、どうぞ。
主人公がつらい目に遭うこととテーマとの関係は
記者:ニコニコ動画の高畑と申します。受賞おめでとうございます。 千早:ありがとうございます。よろしくお願いします。 記者:恒例の質問なんですけれども、ニコニコ動画はご存じでしょうか。 千早:はい? 記者:あ、すいません。ニコニコ動画はご存じでしょうか。 千早:いや、分からないです。ごめんなさい。 記者:今、見ているユーザーの方々から質問が来てまして、その質問を私が代わりにさせていただきます。年齢、性別、出身地、無回答の方からです。主人公がつらい目に遭うシーンが読んでいてつらかったです。でも最後まで読み終えると、じーんとして、元気が出る読後感でした。つらいシーンが描かれる必然性を感じました。小説を書く上で主人公がつらい目に遭うことは大切だと思いますか。今回の作品の生と死というテーマと関係があるのでしょうか。 千早:つらいことのない人生を生きてる人はいないと思うので、必要かと言われると、それを書かないほうが不自然かなとは思います。 記者:ありがとうございます。 千早:はい、ありがとうございます。 司会:はい、質問いかがでしょうか。はい、どうぞ。