CSで下克上が実現する可能性はあるのか? ―― 里崎智也氏に聞く
総力を持つ巨人が有利
ーーソフトバンクはどうでしょうか? 「ソフトバンクは後半に崩れた先発陣の不安をどう解消するかですね。摂津も打たれたままシーズンを終え、しかもCSまで実戦間隔が空きました。彼の出来が100%でなくとも80%には戻っていないと厳しい戦いを余儀なくされるでしょう。大隣も、短期決戦で、どこまで状態を維持できるのか。この2人に、スタンリッジ、中田が先発でしょうが、その次の投手の名前がすっと出てきません。中継ぎ、抑えは充実していますが、先発が崩れると、彼らが持ち腐れとなる危険性もあります。打線は、実は、7、8、9番がカギです。そこがつながると手をつけられなくなります」 ――続いてセの広島の“下克上”の可能性はどうでしょうか? 「勝てば2位になれた本拠地の最終戦で前田健太が勝利投手になっていれば、その可能性もあったかもしれませんが、広島にも不安要素が多いです。広島は、マエケンのチームですが、彼はおそらく絶好調ではありません。持っている能力値は高くとも、先発完投能力を持っているマエケンが、今のままの状態でCSに入らねばならないのは不安です。またミコライオら中継ぎ、抑えがごそっといなくなっているのも大きなマイナス要素です。確かに若手の機動力を絡めていく打線に得点力はありますが、ポイントは、エルドレッドとロザリオという外国人選手ですよね。あの2人が徹底してマークされ、抑えこまれると、得点力がぐっと下がります。先発だけでなく、中継ぎ、抑えも含めて阪神との投手力比較でいくと分は阪神にあります」 ――セの展望としては? 「巨人が有利ですね。先発から菅野が抜けたと言え、杉内、内海、小山、沢村の顔ぶれを見ると、阪神のメッセンジャーを別格とすれば、そう大差はないですよ。逆に総力戦に耐えうる戦力が巨人は充実しています。今年は、山口、西村、マシソンが不安だとされていますし、実際、救援防御率は昨年よりは大きく下がっているようですが、(2.57→4.01)メディアへの露出が多い巨人ではイメージが先行しているように感じます。鈴木の足を含めた代打陣など、途中出場の選手の厚みと質は、巨人が抜けていて、それは勝負どころでの作戦につながっていきます。また東京ドームという地の利も大きく働くでしょう」 ――というと? 「東京ドームでは、『ポーン、はい、ホームラン!』ですから。阪神で一発を使えるのはゴメスくらいですが、巨人には飛び道具を使える選手も揃っています。それにバッテリーが東京ドームを知り尽くしていますよね。僕もそうでしたが、打球が上がっただけでホームランになるので、ついつい引き気味の慎重なリードになりかねないのです。それが、うまくはまればいいですが、恐れてボールが先行してしまえば終わりです」 (文責・本郷陽一/論スポ、アスリートジャーナル)