CSで下克上が実現する可能性はあるのか? ―― 里崎智也氏に聞く
プレッシャーを味方にせよ
――終盤戦に露呈した中継ぎ、抑えの疲労度が心配です。 「その影響はないでしょう。僕たちも2010年はギリギリの戦いからCSへ乗り込みましたが、疲れの影響はそれほどなく、むしろ試合感覚を失わなかったというプラスの効果が大きかったんです。中継ぎで言えば、比嘉をもっとうまく使えばどうでしょうか。馬原、佐藤、平野らは、一緒のタイプで、まっすぐが悪くて打たれると選択肢が狭くなります。比嘉は技術で抑えるタイプ。彼の存在で余裕が生まれると思います。それより心配なのは、ソフトバンクに最後の決戦で敗れたことで、『次は絶対に勝つんだ』という思いが強すぎて、その欲がプレッシャーになることです」 ――というと? 「僕が16年のプロ生活で感じたプレッシャーの定義とは、勝ちたい、成功したい、いいところを見せたいという欲の強さからくるんです。絶対に勝たねばならないという気持ちが強すぎると、何かうまくいかないことが起きたときに『大丈夫かな?』とネガティブな発想に変わるんです。体が動かなくなるんです。終盤のオリックスは、その意味でプレッシャーに対する弱さが見えました。最終戦でサヨナラ負けをして目の前でソフトバンクに優勝をさらわれた試合で、キャッチャーの伊藤が泣き崩れていましたよね」 ――10月2日のヤフオクドームでのソフトバンク戦ですね。 「厳しい言い方をするようですが、プロならば『部屋に帰ってから泣け!』と言いたいのです。負けた中でも、次にCSで戦うのですから、弱みを見せず『まだ俺たちには引き出しがあるぞ』という次を戦う準備の姿勢を見せておくのがプロです」 ――そこがプレッシャーに勝つひとつの方法ですか? 「余裕があれば、プレッシャーをプラス思考に変えることできます。2010年の僕らは、ファイナルステージでのソフトバンクとの第5戦を2勝3敗のがけっぷちで迎えました。しかも初回に先取点を奪われました。でもファーストステージの西武戦は、いずれも先制されてからの逆転勝ちだったので、先制されて不利なはずのに『先制されたほうが逆転勝ちできるんじゃないか』と真剣に思って、実際、逆転勝ちしたんです。2005年も2010年も『失うものは何もないんだから、やっちゃおうか、目立っちゃおうか』というチームの怖いもの知らずのメンタルが推進力となりました。上のチームは必死でいいですが、日ハムやオリックスのように下から行くチームは『あいつらをちょっと困らせてやるぞ』というくらいの気持ちを持つべきです。プレッシャーを自らにかけるのではなく、バランスのいいチームメンタルで臨めばチャンスは生まれます」