「大岡越前」キャストとの豪華ゴルフコンペも 里見浩太朗が明かす「水戸黄門」秘話…「撮影の合間にご老公や弥七と将棋のトーナメントをしていましたね」
「この紋所が目に入らぬか!」。時代劇といえば ……で思い出すこのセリフ。TBS「ナショナル劇場(終了時はパナソニック ドラマシアター)」枠のドラマ「水戸黄門」が第43部でついに終了というニュースは、2011年12月の日本をざわつかせた。第43部の最終回は12日に、過去の出演者も登場した2時間スペシャルは19日に放送。2017年にBS-TBSでまさかの復活を果たすものの、多くの人が懐かしく思い出すのはナショナル劇場版だろう。 【写真】「静まれ、静まれ!」助さん格さんの歴代コンビ、心に残っているのは? 講談「水戸黄門漫遊記」を土台にしたナショナル劇場版は、1969年8月4日にスタートした。その42年にわたる歴史のうち、“助さん”こと佐々木助三郎を17年、黄門様を9年演じた里見浩太朗さん(88)は、映画「水戸黄門 天下の副将軍」(1959年)での“格さん”こと渥美格之進役を含め、「三役」全てを演じた唯一の役者である。ナショナル劇場版の終了後は舞台で黄門様を演じ、今年11月も御園座(愛知県名古屋市)で拍手喝さいを浴びたばかりだ。 そんな里見さんはナショナル劇場版の最終回当時、「週刊新潮」にとっておきの「水戸黄門・ウラ話」を明かしていた。こんな時代だからこそ染みる勧善懲悪の物語。里見さんのウラ話を聞けば、この年末年始に観返したくなること請け合いである。 (全2回の第1回:「週刊新潮」2011年12月15日号「『里見浩太朗』の『水戸黄門』楽ありゃ苦もある舞台裏」をもとに再構成しました。文中敬称略) ***
東野さんの“農民に化けた黄門様”は天下一
《里見浩太朗さんが助さんとして登場するのは、71年11月スタートの第3部から。最初に仕えた黄門様はナショナル劇場版の初代、東野英治郎氏(94年没、享年86)だった》 東野さんは最初、黒に白が混ざったゴマ塩の髭を生やしたんですが、徐々に白くなっていった。完全に白くなってからの方が黄門様らしくなりましたね。そうでないと、農民の爺さんみたいで(笑)。 俳優座の後輩たちは、あれほど農民の似合う役者はいない、と口々に言ってたが、実際、東野さんが演じた“野良着を着て農民に化けた黄門様”は天下一でしたよ。それでいて、決めどころでは天下の副将軍の威厳を湛えた黄門様を演じるわけですから、やはり凄い役者でしたね。 不思議だったのは、あの人は俳優座出身で、シェイクスピアの芝居だとかスタニスラフスキー(の理論による演技)とかやっていたのに、そうした新劇を否定するんですよ。「日本人が赤毛の真似をしたって格好いいわけがない。上手く見えるわけがない。日本人はね、“土”なんだよ。土の匂いがしなけりゃ日本の役者じゃないんだ」。 僕が「だって、東野さん、シェイクスピアもやってたじゃない」と言うと、「ありゃ形を真似していただけだ」と。お洒落でモダンな黄門様だった2代目の西村晃さん(97年没。享年74)とは対照的でしたね。