期待されて次長に昇進したのに適応障害で休職した男性 復帰後、降格せずに希望の部署に行けたワケ
産業医・夏目誠の「ストレスとの付き合い方」
精神科産業医として45年以上のキャリアを持つ夏目誠さんが、これまで経験してきたケースを基に、ストレスへの気づきとさまざまな対処法を紹介します。 【図表】うつ病にならないためにやめておきたい7つのこと
適応障害やうつ病で休職した社員が復職する際、私たち産業医は発生に明らかに職場要因が関与したケースに対し、会社に配置転換や職務軽減などの助言を行います。助言は重く受け止められるのですが、配置転換に関しては人事や組織の事情があり、難しいことも少なくありません。社内の有力者とつながりがあると、病気になった時も有利だと実感させられたこともありました。そんな例を紹介します。
技術系から新規事業部次長になり、適応障害
メーカー新規事業部次長の木田太郎さん(43歳、仮名)は、眠れなくなり、気分は落ち込み、「適応障害」と診断されて3か月の休職。精神科の主治医から職場復帰可能との診断が出て、この会社の精神科産業医である私のところに面談に訪れました。どういう形で復職するのがいいのか、本人の状況や希望を元に復帰支援計画を立て、会社側にアドバイスするのが私の役割です。 産業医 : 主治医から職場復帰可能の診断書が出たのですね? 木田さん: そうです。主治医からは「現職復帰ではなく、適性に合った職場への復帰が望ましい。産業医の先生と相談してください」と言われました。 産業医 : 診断は適応障害でしたね。 木田さん: はい。今まで経験したことがない職務で、課長から次長に昇進したこともあって、期待に応えようと頑張ったのですが燃え尽きました。 産業医 : どんな点がしんどかったのですか?
営業やマーケティングの話についていけない
木田さん: 様々な部門の人で構成する新規事業立ち上げのプロジェクトチームで、事務系の部長が責任者、技術系の私は次長として事務局の役割でした。 産業医 : それで。 木田さん: 技術者としてずっと開発畑にいたので、営業や経理の人と一緒に仕事をするのは初めてでした。売り上げ目標や利益率、マーケティングなどの話を聞いて勉強したのですが、なかなかピンと来ないところもあって……。 産業医 : やりきれなくてダウンしたのですね。