『エイリアン4』世紀末に狂い咲いたグロテスクSF超大作 ※注!ネタバレ含みます
※本記事は物語の核心に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。 『エイリアン4』あらすじ 2470年。あの日から200年後、軍の科学者達は流刑惑星に残されたエイリアンを宿していた時点のリプリーのDNAからクローンを再生する。しかし、彼らの真の目的はエイリアンの繁殖であり、その軍事利用だった。宇宙船内で養殖中のエイリアンの脱走により、リプリーはまたもや闘いにでることとなる。その頃、クイーンからはリプリーも遭遇したことのない新種が誕生していた・・・。
異形のSF映画を再評価しませんか?
2024年、夏。一本の映画が全米を熱狂させた。その名も『エイリアン:ロムルス』(24)。SFホラーの金字塔『エイリアン』(79)の続編だ。79年のオリジナルから、『エイリアン:コヴェナント』(17)までの全要素を拾ってシリーズのファンをニッコリさせつつ、見つかったら即死の地獄かくれんぼホラー映画に仕上げて新規ファンも開拓。まさに理想の入門編として、高い評価を集めた。 しかし入門編としての高い評価を得たということは、逆に今まで『エイリアン』シリーズへの入門の敷居が高かったことを意味する。そして「最高の『エイリアン』は何か?」という質問は、「『ゴジラ』をどこから観るか?」「『スター・ウォーズ』をどの順番で観るか?」と同じく、宗教戦争が起きがちな話題だ。それくらい『エイリアン』シリーズは作品によって方向性がバラバラで、なおかつそれぞれの個性が強烈なのである。 圧倒的なイマジネーションを持つ“巨匠”リドリー・スコットが監督し、SFホラー映画の古典となった『エイリアン』。妥協なき姿勢で臨む“鉄人”ジェームズ・キャメロン監督が「今度は戦争だ!」とアクション方向に全振りした『エイリアン2』(86)。様々なトラブルが重なった結果、最終的に“鬼才”デヴィッド・フィンチャーが何とか形にした『エイリアン3』(92)。どれも一筋縄ではいかないし、それぞれに良さがある。そんなシリーズの中でもひときわ強烈で異彩を放っているのが20世紀最後の『エイリアン』であり、フランスで奇妙な映画を作り続ける“怪人”ジャン=ピエール・ジュネが手掛けた『エイリアン4』(97)だ。 断言するが、『ロムルス』を含む全シリーズの中でも、『エイリアン4』は明らかに異質である。簡単に言うとブッちぎりで残酷なのだ。全編に渡って血と内臓と肉片とエイリアンの粘液で、グッチャングッチャンのドロドロ、シリーズでも段違いにグロテスクなシーンが連発する。それゆえ他人に勧めにくいのは事実だが、しかし残虐なシーンの数々と、その中にある奇妙な哀しみとユーモアを偏愛してやまないファンもいる(私はその一人である)。 今回はそんなシリーズ屈指の怪作にスポットを当てて、その制作背景と魅力について語っていきたい。