「今の怪談ブームは危うい」“実話怪談”が今改めて脚光を浴びる理由とは? 【怪談師/作家・夜馬裕インタビュー】
夜馬裕:そうですね。ただ、そもそも裏を取れない個人的なエピソードばかりなので、「実際に聞かせてもらった」という意味での実話怪談ですね。 ――そもそも実話怪談の定義とは? 夜馬裕:シンプルに言えば「実際に起きた」または「実際に聞いた」でもいいのですが、体験した人がどこまで話を盛っているのかもわかりません。こちらが話すときも、マンションの階数や性別など、多少変えて話すことはあります。だから実話怪談とは何だろうと考えると、「リアリティーを持っている怖い話」だと思うんですよね。 実話怪談ファンにはいろいろなレイヤーの人がいて、まず魂の存在を信じたいという人がいます。この人たちは、誰かの体験談よりも、幽霊が見える人の話の方が好きで、怪談にエンターテイメント性を求めていません。一方で、リアリティーを持った怪談を、エンターテイメントとして聞きたいという人もいます。手品に例えるなら、タネのある手品としてではなく、超能力(リアル)として見たいという人ですね。 イベントに怪談を聞きにくるお客さんの多くは、そういうリアリティーとエンターテイメント性を求める人たちだと思っています。最近はフェイクドキュメンタリーといったジャンルもありますが、あれはどこまで行っても、すごくリアルなホラー。だから実話怪談とは全く違うものなんですよね。 ――観客や読者にリアリティーを感じさせることが大事? 夜馬裕:そうですね。例えば駅の名前が出てくると、僕は必ずGoogleのストリートビューで調べます。「広いバスロータリー」と言っていても、実際は大して広くなかったりするんですよ。本筋に関わることでなくても、確かめられることは、確かめるようにしています。それによって、不思議な話もリアルなものと信じて語れるのかなって。それが怪談のリアリティーの担保になっているのだと思います。