水虫がある人は「メラノーマ」に気をつけたい…30%は足裏に発症する
誰にでも必ずあり、チャームポイントにもなりうるホクロ。しかし、年々大きくなったり、盛り上がるようなら「悪性黒色腫(メラノーマ)」の可能性がある。日本では10万人に1~2人の割合で発症し、皮膚がんの中でも最も悪性度が高いとされている。東京慈恵会医科大学皮膚科学講座教授の延山嘉眞氏に聞いた。 体のあちこちにカビが…「爪の水虫」放置はこんなに危険 ◇ ◇ ◇ メラノーマとは、紫外線などによる刺激で皮膚の色素をつくるメラノサイトが悪性化した皮膚にできるがんのことで、主に4つのタイプがある。ドーム状の黒い膨らみができる「結節型」、全身のあらゆる部位に黒い平らなホクロができる「表在拡大型」、顔など紫外線にさらされやすい部位に不規則な形のホクロができる「悪性黒子型」、足裏や手のひら、手足の爪に左右不規則な黒いホクロができて、その一部が盛り上がる「末端黒子型」に分類される。ほかにも鼻腔や食道、直腸、肛門などの皮膚以外にできる「粘膜型」がある。中でも日本人は「足裏」のメラノーマが多く、全体の約30%を占めるとされている。 「初期ではかゆみや痛みの自覚症状がないうえに、病変が黒くならないタイプもあり、発症が見落とされやすい。進行して皮膚の真皮に入り込むと、患部周辺のリンパ節(所属リンパ節)に転移したり、血液を介して肺や肝臓、脳、骨へ遠隔転移していきます。病変の厚みが4ミリを超えると転移するリスクが高くなるので、自己判断で放置せず、早めに皮膚科を受診する必要があるのです」 治療は手術でがんを切除するのが基本だ。ただし、所属リンパ節への転移や他の臓器への遠隔転移が見られ、手術での切除が難しいステージ4の場合や、手術ができない人に対しては薬物療法が行われる。 「メラノーマの患者さんは病変部にBRAFと呼ばれる遺伝子に変異が見られやすい。そういった方に対して高い効果を発揮するのが、分子標的薬の『BRAF・MEK阻害薬』です。しかし、BRAF遺伝子の変異は日本人患者の約30%にとどまり、すべての方に適応するとは限りません。変異がない場合には、免疫チェックポイント阻害薬の『オプジーボ(一般名:ニボルマブ)』や『キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)』が選択されます」 手術ができてがんを完全に切除しても、メラノーマは再発や転移の可能性が高い病気だ。そこで近年は、所属リンパ節への転移が確認された患者に対して、術後の再発や転移予防の目的で分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を使用する「術後補助療法」が行われるケースが多い。術後12カ月間の治療で、かつて50%だった再発率は40%に減少すると報告されていて、有効性の高さから保険適用になった。 ■早期発見のための4つのポイント 「悪性度が高く、術後にもケアが必要なメラノーマは、何よりも早期発見が重要です。見極める方法として、体にできたホクロが①形が左右対称でない②境界が不明瞭である③色にムラがある④直径が6ミリ以上(鉛筆の尻を当ててもホクロが隠れない)であれば、悪性の可能性も否定できないので、皮膚科を受診して診てもらってください」 さらに、今年5月に発表された延山氏らの研究によると、足裏にできるメラノーマの発症に「足白癬」=「水虫」が関与している可能性があるという。足裏のメラノーマがある患者30人と、メラノーマ以外の皮膚病変がある患者84人を調べると、前者は後者と比較して約2倍、足白癬に罹患している割合が高かった。 「15年ほど前から、足裏にできたメラノーマの手術を行う際に、足白癬を患っている患者さんが多い印象を受けていました。そこで今回、日本人の診療記録を用いて解析する後ろ向き研究を行ったところ、メラノーマの人は足白癬の中でも足の皮膚がガサガサする『角質増殖型』を高頻度に抱えていることが判明したのです。足白癬があるすべての人がメラノーマを発症するわけではありませんが、足白癬の治療と予防が、メラノーマの発症予防につながる可能性があるのではないかと考えています」 皮膚の異変を甘く考えず、不安があれば早めに受診したい。