「暗黒の臓器」すい臓のがんに特化したドック開始 福井県内初、県済生会病院が最新の遺伝子検査導入
福井県済生会病院健診センター(福井県福井市)は10月から、県内で初めてすい臓がんに特化したドックの提供を始めた。すい臓は胃や腸の陰に隠れ、がんを発症しても自覚症状が出にくいため、「暗黒の臓器」とも呼ばれる。最新の遺伝子検査を取り入れた新ドックは体の負担も少なく、がんの早期発見が期待される。 すい臓がん患者は年々増加しており、2023年の人口動態統計によると、死亡者数は全国で4万175人(男性1万9859人、女性2万316人)に上る。肺がん、大腸がんに続く3番目に多いがんとなっている。 新しく始まったすい臓がんドックは、メッセンジャーRNA(mRNA)検査とMR胆管すい管検査(MRCP)を組み合わせているのが特徴。タンパク質の設計図であるmRNAを分析する遺伝子検査で血液細胞にあるすい臓がん特有のmRNAを調べることにより、がんができた初期の段階で異常を見つけることができる。同病院によると、従来の血液検査と比べ、早期すい臓がんの検出感度は2倍以上という。 MRCPは、強力な磁場と電波を組み合わせた画像解析で、すい管の異常を捉えることでがんの早期発見につなげる。被ばくがなく、造影剤も使わないMR検査で、体の負担は少ないという。 同病院健診科の渡邊弘之消化器内科医師は「すい臓がん患者は今後さらに増加すると見込まれる。家族歴や喫煙習慣がある人はドックを受けてほしい」と呼びかけている。 ドックの料金はmRNA遺伝子検査と従来の血液検査、MRCPの三つを組み合わせたプランで9万9千円。mRNA遺伝子検査と従来の血液検査の二つのプラン7万1500円などもある。問い合わせは同センター(平日午前8時半~午後5時)=電話0120(291)373。 ▼すい臓 胃の裏側にある長さ15~20センチ、厚さ2センチほどの細長い臓器。食べ物の消化や血糖値の調整など重要な役割を担っている。初期のすい臓がんは症状がほとんどないため、早期発見が難しく治療が遅れることが多い。すい臓の周囲には重要な臓器や血管が集中していて転移しやすく、5年生存率は約10%と他の消化器がんと比べて非常に低いことが特徴。
福井新聞社