働き方改革の是非 残業規制は“稼ぎたい自由を奪う愚策”?茂木健一郎氏「幸せの条件について、ちゃんと立ち止まって考えてこなかった結果だ」
一方で、NPO法人「POSSE」理事の坂倉昇平氏は、“残業規制はより厳しくすべき!”との考えで、長時間労働によって、人手不足・少子化を加速させ、中長期的な生産性も下げる。制度よりも意識改革をするべきと提言。 坂倉氏は「日本で長時間働いている人はたくさんいると思う。2023年でも過労死、脳梗塞、心筋梗塞、精神疾患で亡くなったり、後遺症が残ってしまった方で労災を申請した人は4600人で過去最多だ。働き方改革で、労働時間が短くなった会社もある一方で、長時間労働によって、後遺症を負ってしまったり、命を落としてしまう事件が非常に多い。そういった実態がいまだに過小評価されている。今ですら、法律が全然守られていない。上限規制を緩和したらどうなるのかを懸念している」と話す。 本人は大丈夫だと思って働いてしまっているのか。「最初はこの仕事を楽しいと思ってやっているはずだが、何年かしたらパタっと倒れたり、気づいたら線路に飛び込みたいと思い始めたりして、初めてうちに相談に来て、今すぐ仕事は休んでくれと言って、労災を申請して認められるなど、そういうケースも結構ある。自分の無理な範囲が分かったり、会社がこれ以上仕事を任せてはダメだとやってくれればいいが、分からない。だから客観的なルールは必要だと思う」と答えた。
スタートアップの会社で働いた経験のあるハヤカワ五味氏は「普通に体を壊す人は多い」といい、「もちろんそれで成長してうまくいっている人もいるし、自分も割とハードに働いてきて今の自分がいると思いつつ、これは成功者の話。何人も死んでいった人たちがいた中での生存者バイアスだ。その前提で考えなくてはいけない。めちゃくちゃ働きたいなら、フリーランスや管理職以上の役員であれば残業の規制はないので、そうなったらいいのではないか」と述べた。
■時間外労働の上限規制「これ以上残業して病気で倒れたら過労死だと認められる基準」
時間外労働の上限規制は2019年4月に施行され、月45時間・年360時間、特別事情ありで複数月平均80時間までと決まっている。 板倉氏は「これ以上残業したら、脳や心臓の病気で倒れた場合に過労死だと認められるための基準だ。人生において家族、友達、趣味などに時間を使っていくことが、実は重要で、その中でお金を稼ぐために労働がある。EU全体では週48時間しか労働しちゃいけない。フランスだったら法律で35時間で1日7時間しか働けない。それは生きることの意味、そもそもなぜ働くのかという考えがある。でも日本だと死ぬかどうかで線が引かれている。それだけのところをさらに緩和するのは何を言っているのかと正直思う」と苦言を呈した。