「人の運命を見るのは好きじゃないの」 射殺された「天才霊感少女」藤田小女姫の数奇な人生
負債額は約2億3000万円
ハワイに出かけて遺骨を引き取ることになったのは、母久枝の実弟の息子である尾崎宜明、同じく妹の息子である浅田直也であった。彼ら母方の親族は、早々に小女姫の遺産相続を放棄している。 浅田は、「彼女の交友関係は、政治家から芸能人までさまざまです。各方面から、しのぶ会をしたいから、遺骨を持参してほしいという要望が寄せられて対応に苦慮しました。マスコミの取材も激しく、遺産目当てという報道まで出る始末です。さらには、彼女にお金を貸しているというところから、次々と有象無象の催促がきて、本当に弱りました」と、当惑した顔で当時を振り返った。 結局、小女姫の負債も含めた遺産を相続したのは、異母弟の藤田洋三だった。洋三は、その結末をこう説明した。 「私が、限定承認という手続きを取って相続しました。これは、資産額を負償が上回る場合、資産を処分して得た額だけを、負債に充てればいいという制度です。たしか負債額が2億3000万円ぐらいで、成城や箱根のマンションを処分した額が9000万円ほどでした。保険金? こちらは最高裁まで争ったのですが、裁判所の判断は、東亞子より吾郎が後に死んだということで、吾郎の親(戸籍上)を支払先と認めるというものでした」 債権明細の一部で知る限りでは、小女姫と吾郎には、互いが受取人になり合う形で、少なくとも総額5300万円になる5タイプの保険がかけられていた。
「吾郎は間違いなく実子」との証言
最も奇怪なのは、母方の親族も、洋三も誰も肝心な遺骨の行方、彼女の墓の在処を知らなかったことだった。 遺骨を一時保管していた尾崎は、 「骨は、親戚付き合いのあった母方の親族20人ほどが集まって神式の祭り(葬式)を営んだ後、成城の自宅で小女姫の会社の残務処理をしていた秘書に、私がたしかに手渡しています。ただその後、どうなったかはまったく聞いていません。その秘書の方も、もう亡くなられたと聞いていますが」と話す。 唯一考えられるのは、吾郎方の縁者に引き取られたということだ。吾郎は、戸籍上は名古屋に住む元国鉄職員の三男である。が、事実は、元国鉄職員は戸籍を貸しただけで、吾郎は間違いなく小女姫の実子であり、父は別にいるのだという声にぶつかった。 前出の元実業家は、小女姫が成城の自宅で開いたくだけた酒席で、自分を捨てた吾郎の実父に対して、激しく感情をむき出した場面に遭遇したことがあったという。そこにいた面子は、小女姫が世に出るきっかけとなった新聞記事を書いた産経新聞の内川源司と、藤田観光社長だった田中雄平、そして彼だけだった。田中は、小女姫の能力を政財界に売り出した、あの小川栄一の後継者である。面倒見の良かった田中と内川は生涯、彼女の気の置けない特別な友人であった。