少数与党、予算・税制実現に難路 財政拡大圧力、かすむ健全化 「見切り発車」で修正も〔深層探訪〕
衆院選で少数与党に転落した石破茂政権は、2025年度政府予算案と税制改正大綱で、野党の賛同を得られないまま「見切り発車」を余儀なくされた。27日に閣議決定した予算案は過去最大の115兆円超。石破首相は「熟議の国会」を目指して年度内の予算成立を図るが、審議の過程で野党から修正要求を突き付けられるのは必至の情勢だ。来夏の参院選を前に歳出圧力は高まる一方で、財政健全化の姿勢はかすんでいる。 【ひと目でわかる】来年度予算案で想定される動き ◇野党をてんびんに 石破政権が初めて臨んだ来年度予算編成と税制改正。国民の手取りを増やすための「年収103万円の壁」見直しを巡っては、与党の自民・公明両党が「25年に123万円」へ引き上げる案を示し、178万円への引き上げを公約に掲げる国民民主党との協議は決裂。ひとまず与党案を税制改正大綱に盛り込まざるを得なかった。 国民民主との連携が不調となる中、与党が急接近したのが日本維新の会。衆院の議席で国民民主を上回る維新を取り込めば、国会運営で協力を得やすいと踏んだためで、25年度予算案に教育無償化を反映させたい維新と協議を始めた。「看板政策で存在感を発揮したい野党への懐柔策」(政府関係者)に打って出た形だ。 ◇財源がネックに 自公は国民民主、維新との政策協議の結論をそれぞれ来年に持ち越したが、最大のネックになり得るのが国民負担軽減に伴う財源の確保だ。「103万円の壁」見直しで国民民主の178万円案が実現すれば、財務省は7兆~8兆円の税収減になると試算。これに対し、維新が重視する所得制限なしの高校授業料無償化の経費は年6000億円にとどまるという。 「財務省の戦略は予算に対する影響が最も『安上がり』の政党と握る」。国民民主の玉木雄一郎代表(役職停止中)は与党との協議が暗礁に乗り上げたことを受け、自身のX(旧ツイッター)で、178万円案に慎重な財務省をなじった。予算案と税制大綱が決まっても財務省幹部は「仕事納めまで半分も終わっていない」と厳しい駆け引きが予想される今後の協議に身構える。 ◇税収頼みの健全化 新型コロナ禍により膨らんだ歳出の「平時回帰」に向けた道は険しい。25年度予算案の財源は、過去最高額を見込む税収の存在感が増す一方、新規国債発行額を17年ぶりの低水準に減らすという「税収頼み」の健全化であることは明らか。与野党の協議次第で野放図な財政に拍車が掛かる恐れもある。 石破首相は27日、東京都内で開かれた内外情勢調査会で講演し、少数与党の国会運営に関して「野党に賛成していただかなければ予算も法案も通すことはできない」と強調した。野党第1党の立憲民主党も国会審議で修正を要望していく構えで、予算や税制改正関連法案の成立が4月にずれ込めば、暫定予算編成という非常事態に追い込まれる可能性もある。