糖尿病の治療薬「GLP-1受容体作動薬」の効果・副作用を薬剤師が解説 ダイエット目的の服用は危険?
GLP-1受容体作動薬の正しい使い方について知る
編集部: GLP-1受容体作動薬は飲み薬ですか? 注射ですか? 志田さん: 2024年4月現在、日本国内では8種類の製品が承認されており、そのうち7つが注射剤、1つが錠剤の飲み薬です。なお、8製品のうちリベルサス、オゼンピック、ウゴービは異なる製品ですが、薬効成分は全て同じセマグルチドという成分です。リベルサスは錠剤の飲み薬、オゼンピックとウゴービの2つは注射剤です。 編集部: GLP-1受容体作動薬は、どのくらいの期間使い続けると効果が出るのでしょうか? 志田さん: 治療効果が十分で副作用が問題にならなければ、期間の上限は無く長期的に継続して使用することができます。継続的に使用できるかどうかは、使い始めてから数週間~数か月の間でわかります。その間、必要に応じて薬の量や製品の種類を変更しながら、治療効果や副作用を観察して判断します。このような薬の調節は薬と身体との相性に大きな個人差がありますので必ずおこないます。 編集部: GLP-1受容体作動薬は保険適用の薬ですか? 志田さん: 2024年4月現在、日本国内で保険適用可能なGLP-1受容体作動薬は8種類あります。しかし、GLP-1受容体作動薬に限らず、処方せん医薬品を保険適用で使用できるのはその医薬品の適応症と診断されている人の治療に使う場合のみです。医薬品の適応症は医薬品の添付文書の「効能・効果(適応)」の項目に記載されています。8製品の適応症はウゴービが肥満症、それ以外は2型糖尿病です。
GLP-1の副作用と注意点とは
編集部: GLP-1受容体作動薬を使用することができない人はどのような人ですか? 志田さん: 治療効果が出るまでに数週間程度必要になるため、すぐに血糖コントロールが必要な糖尿病性ケトアシドーシスや糖尿病性昏睡(こんすい)になっている人は使用できません。また、体調が急変する可能性がある重症感染症の人や手術などの緊急対応が必要になりそうな人は、急な体調の変化に合わせて厳格な血糖コントロールが必要なため、インスリン製剤を使用します。 編集部: 副作用についても教えてください。 志田さん: 特に注意する必要があるのは、胃腸障害、低血糖、膵炎の3つです。胃腸障害は薬の使い始めにGLP-1受容体作動薬の食欲を減らす効果が裏目に出てしまったことによるもので、下痢や便秘、吐き気・嘔吐などの症状が出ます。低血糖はほかの薬との併用や過度な食事制限・運動などによるもので、軽度では異常な空腹感や冷や汗、ふるえ、だるさなど、重度では錯乱やけいれんなどの症状が出ます。膵炎は薬と身体との相性の問題で、GLP-1受容体作動薬が膵臓で悪さをしてしまうことでまれに起こり、使用した後に我慢できないぐらいひどい腹痛と嘔吐などの症状が出ます。 編集部: 副作用が出た時の対処方法について教えてください。 志田さん: 副作用の対処法は症状の種類と程度に分けて考える必要があります。日常生活に支障がない程度の胃腸障害は、脱水にならないように水分補給をしながら、継続して使用していると徐々に落ち着きます。日常生活に支障がある場合は次の受診日を待たずに早めに受診してください。症状に応じて薬の量や製品の変更、それが難しい場合は中止してほかの治療に変更することになります。 編集部: 急に強い症状が出る場合もあるのでしょうか? 志田さん: 急に激しい腹痛がでて、特に背中の痛みや嘔吐も出るようでしたら、膵炎の可能性が高いですね。必要であれば救急車を利用して、すぐに受診してください。軽症の場合は1週間ほどで完治しますが、重症の場合は1か月以上の入院が必要になります。そのほか低血糖は軽度であれば、すぐにブドウ糖やブドウ糖を含む清涼飲料水をとり、安静にするとすぐにおさまります。重度の場合は自分で対処するのは困難ですので、できるだけ軽度の状態で対処することが大切です。