WRC、2026年まで技術レギュレーション変更せず。FIAの提案に反発したチームも安堵
6月11日に行なわれた世界モータースポーツ評議会(WMSC)で、2026年まで現行のハイブリッド車両が世界ラリー選手権(WRC)に参戦し続けることが確認された。 FIAは2月にWRCの将来性について提案を実施。2025年から現行のラリー1車両からハイブリッドユニットを排除し、リヤウイングの変更によって空力性能を低下させ、エアリストリクターも小型化することで、ラリー2車両との性能差を縮めるというものだった。 同時にラリー2車両の性能を向上させ、一部の競技者がラリーの最前線で戦えるようにするためのオプションのアップグレードキットをメーカーが製造するという提案も行なっていた。 これはエントリーを増やし、2027年のレギュレーション変更に備え、よりスムーズに移行することが目的だった。 しかし既報の通り、こうした提案はチームやメーカーから強い反発を受け、4月にFIAに対して現行ルールの維持を求める書簡が提出された。 各チームの主な不満は、来季に向けてマシンを再設計・テストし、変更を検証する時間が短いということや、5年間のホモロゲーション・サイクル(2022~2026年)にわたって使用することが期待されていた現行マシンにすでに投資が行なわれているという点に集中していた。 そのため2月以来、関係者やWRC委員会が様々な会合を開き、今後の解決策を探ってきた。結果として、WRCを戦うチームは来年もラリー1規定が継続されると示唆していた。 FIAはウズベキスタンのサマルカンドで開催されたWMSCで来季のレギュレーションが承認されたことを受けて、次のように声明を発表した。 「2025年と2026年のFIA世界ラリー選手権シーズンにおいて、すべての関係者の間で技術的な安定性が合意された。WMSCは、広範なフィードバックと議論を経て、ラリー1/2車両のWRC技術規則が今後2年間変更されないことを確認した」 「2027年以降のレギュレーションの方向性については、すべてのステークホルダーが前向きに協力しており、FIAが以前に定めた最高峰クラスの参加者増加を主目的とする主要ターゲットについては、世界評議会メンバーとマニュファクチャラーの間で良好なコンセンサスが得られている」 「現在のメーカー各社が、このスポーツの長期的な将来について事前に十分なコミットメントをしてくれることが、世界評議会の強い期待である。この(2027年)レギュレーションは12月のWMSCで承認される予定であり、各メーカーが適応するために2年以上のリードタイムを確保することができる」 「FIAはコマーシャル部門とコミュニケーション部門のチームを強化し、プロモーターとプロモーショナル・ワーキング・グループを中心とする主要な利害関係者への支援を拡大する」 「WRCスポーティング・ワーキング・グループの設立に伴い、スポーティング・レギュレーションの管理には強力な焦点が当てられる。これらのスポーツレギュレーションの最終バージョンは、10月のWMSCで提案される予定である」 FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長は次のように付け加えた。 「WRCはFIAにとって非常に重要で、ラリー競技の最高峰であり、私はこの数週間、その将来の方向性についてメーカー各社と多くの話し合いをしてきた」 「今後2年間、技術的な安定が必要であることは明らかだが、同時にFIAにとって重要なのは、この安定を提供する際に、メーカーからも同様の積極的なコミットメントを得ることだ」 当然のことながら、この決定に対するWRCプロモーターとチームの反応はポジティブなものであり、前者はこの動きを”非常に重要な瞬間”と表現している。 WRCプロモーターのマネージングディレクター、ジョナ・シーベルは語った。 「WRCプロモーターとして、これは我々にとって非常に重要な瞬間である。技術的な観点から今後2年間、統一性と一貫性をもって前進することができる一方で、我々はこのスポーツのファンベースを拡大し、ファンのために提供するための新しくエキサイティングな方法に多大な投資を行なっている」 トヨタのチーム代表であるヤリ-マティ・ラトバラは「とても良いニュースだ」と語った。 「というのも我々はサイクルを考えて投資をしてきたからだ。これまで通常5年のサイクルが妥当だったんだ」 「今、変更を行なっていたら大きな投資が必要になっていただろうから、安定性に集中し2027年に向けて新しくレギュレーション変更を行なうというのは非常に賢い選択だ」 レギュレーションの安定を求める結果となったことに満足しつつも、M-スポーツ・フォードのボスであるマルコム・ウィソンは、FIAの提案の中には参考にすべき案があったと付け加えた。 「これは今後数年間の我々にとって本当に前向きなステップだ」とウィルソンは語った。 「プロモーション面、マーケティング面、そしてイベント運営に関する計画について、いくつか良い提案があった」 「それを実現するための作業を開始する必要がある。技術面で一貫した提案があれば、WRCでの野心的な目標を達成する余地はあると思う」
Tom Howard