調査結果に見る新築マンション購入者の3つの属性と意識の変化。金利上昇が懸念される今後はどうなる?
ただし、供給戸数への影響の方が大きくなる回答だ。「供給戸数が減少する(10%以上)」(31%)、「供給戸数が減少する(10%未満)」(46%)と、実に77%のデベロッパーは金利が上昇すると供給戸数が減少すると見ているわけだ。
金利が上がっていくと専有面積が小さくなる?
では、もしローン金利が上がると、新築マンションの販売価格は下がるのだろうか? おそらく、ローン金利が0.5%も上がると購入者が借りられる額が減るので、販売価格を下げざるを得ないということだろう。 新築マンションの価格は、「土地」を買った費用と施工会社に払う「建築工事」の費用、デベロッパーが土地や建築工事の費用を金融機関から借りて支払う際の「利息」に、「宣伝や販売管理にかかる費用」が加算され、デベロッパーが自社の「利益」を上乗せして全戸の販売総額が決まる。 1年後に販売するマンションの場合、すでに土地を購入しており、施工会社を決めて建築工事の費用も決めて発注していることが多い。となると、ローン金利が上がったからといって、販売価格を変えることは簡単ではない。金利の上昇を見ながら、販売の長期化も視野に戦略を見直したり、住戸の内装や設備のグレードを下げたりといったレベルの対応しかできないだろう。 一方で、地価は上昇しているし、人件費高騰による建築工事費用の上昇も続く見込みだ。金利が上昇すれば、デベロッパーが負担する利息も増える。省エネ基準が今後ZEH水準に引き上げられることを踏まえた性能向上も必要なので、その分のコストアップもある。このようにマンションの原価は上がるので、販売価格を下げる余地はあまりない。となると、販売価格を下げるために「専有面積を小さく」して、平米単価は上がっても面積を小さくすることで各戸の販売価格を引き下げる、といった対応が増える可能性が高いだろう。 実際に、リクルートの新築マンション購入者の調査結果では、価格上昇局面で購入したマンションの面積が小さくなる傾向が見られる。2023年調査では、50~60平米の広さが前年よりも増えていた。 金利の上昇による住宅市場への影響は大きい。それでも、収入が増えれば、物価上昇や住宅価格上昇などの影響は少なくなる。つまり、これからの景気回復が本格的になるかどうかで、マンションの購入ニーズも変わり、その大きさに応じてマンションの販売価格も変わっていくのだろう。 ●関連サイト リクルート「2023年首都圏新築マンション契約者動向調査」 三菱UFJ信託銀行「2023年度下期デベロッパー調査」
山本 久美子