著名人が後押しコメント添えた1冊、高校生に20歳までの間貸し出し…「人生の節目に読み返して」
言葉で若者を応援しようと、宮崎県西都市で市内唯一の高校・県立妻高に通う生徒たちに、20歳までの数年間、本を1冊貸し出す取り組みが始まった。市出身の著名人らが「人生の選択に直面した時に読み返してほしい」と選んだ本で、メッセージも添えられている。「20歳を祝う会」で帰省する際の返却を想定しており、主催する市などは、地元に思いを寄せるきっかけにもなればと期待している。(浜崎大弥)
米良美一さん・オカリナさんらゆかりの人選書
県中央部に位置する西都市はピーマンをはじめとした施設園芸を中心に農業が盛んで、国特別史跡の西都原古墳群で知られる。市内に大学はなく、高校卒業とともに市外に転出する若者が多い。1960年に5万人を超えた人口は約2万7000人まで減り、高齢化率は39・5%(いずれも昨年10月時点)に上る。
「18歳の図書館」と名付けた今回の取り組みは、市内への移住を考える人らへの応援プロジェクトを進める一般社団法人「まちづくり西都KOKOKARA」と市が企画。「日本一長い貸し出し期間」と銘打っている。
市出身のカウンターテナー歌手米良美一さんやお笑いコンビ「おかずクラブ」のオカリナさんをはじめ、市にゆかりがある人を中心に、Jリーガーや元アイドル、パイロット、農家ら約60人が選んだ約250種類の本を用意した。
本はタイトルや著者がわからないよう1冊ずつブックカバーで覆い、背表紙に選者が付けたキーワードが記されている。例えば「無理をして生きてきた人」(加藤諦三著、PHP新書)という本のキーワードは「幸せになるために読む本」といった具合だ。ほかにも「心をタフにする本」「夢を追い続けたくなる本」「肩の力を抜く本」といったキーワードが並ぶ。本にはまた、「常に微笑(ほほえ)みを絶やさないこと。運も人気も集まってきて、必ず助けてくれる」などと選者が生徒に向けて寄せたコメントを印字したしおりが、1冊ずつ挟まれている。
将来の自分へ手紙
貸し出す対象は妻高の2、3年生約230人で、貸し出しに合わせて、将来の自分に向けた手紙を書いてもらうこともこの取り組みの特徴。高校時代の自分の心のうちや、なぜその本を選んだのかなどをつづってもらう。