牧野知弘 東京23区新築マンション平均価格は前年同期比で6割以上上昇!今や「億ション」は当たり前…23区内<中古でも1億円超え物件の数>1位はやはりあの区
「かつて超高額マンションと言えば1億円、いわゆる『億ション』でした。ところが今や、3億円を超える住戸は珍しくありません」と語るのは、オラガ総研代表取締役の牧野知弘さん。今回は、マンション価格高騰の背景を牧野さんに解説していただきました。牧野さんいわく、「戸建て住宅街の印象の強い杉並区や練馬区でも億ションが普通に登場するようになっている」とのことで――。 【図】東京23区別「1億円以上の中古マンション」数。1位はやはりあの区 * * * * * * * ◆億ションはもはや普通の物件 不動産経済研究所が調査・発表する「新築分譲マンション市場動向」によれば、2023年上半期(1~6月)、首都圏(1都3県)における新築マンション供給戸数は1万502戸。 平均価格は8873万円と、前年同期比で36.3%もの大幅な値上がりとなりました。 これを東京23区に限定すると、平均価格は何と1億2962万円、同60.2%上昇になります。坪あたりに直すと636万円です。 庶民感覚から言えば、都区内の新築マンションは一般的なファミリー向けである66平方メートル(20坪)はおろか、10坪=6360万円すら手が届かないのが、今のマーケットの現実です。 もちろん、こうしたデータには一定のバイアスがかかることがあります。 たとえば、同時期に供給された新築物件のなかに、都心一等地でまとまった販売があったとの指摘があります。
◆びっくりするような価格 しかし、たとえば東京都北区のJR埼京線の十条(じゅうじょう)駅前の市街地再開発事業によって誕生するタワーマンション(タワマン)は、間取り2LDK~4LDK・住戸面積58~92平方メートルで、販売価格は8050万~1億5890万円です。 坪単価は約500万円、つまり66平方メートル(20坪)で1億円です。 私は長らく不動産業界に身を置いてきましたが、誤解を恐れずに申し上げるなら、この立地の相場観からはびっくりするような価格です。 たまたま、この物件の発売前に、事業関係者と話す機会があったのですが、彼らですら「驚きの価格」と言っていました。 ところが、売り出してみると反応は上々とのことです。確かに、徒歩1分の十条駅から埼京線直通で池袋(いけぶくろ)まで7分、新宿(しんじゅく)に13分、渋谷(しぶや)には18 分という交通利便性、また充実した商店街など、評価できるポイントはあります。 それにしても、板橋区の下町、十条エリアで坪単価500万円は、驚き以外の何物(なにもの)でもありません。
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