牧野知弘 東京23区新築マンション平均価格は前年同期比で6割以上上昇!今や「億ション」は当たり前…23区内<中古でも1億円超え物件の数>1位はやはりあの区
◆大阪都心部の一等地 一昔前であれば、販売価格が1億円を超えるマンション、「億ション」は一部のセレブリティ(セレブ)にしか買えない憧れの物件でした。 ところが現在、その立地は東京都心一等地以外に、加速度的に広がっているのです。 大阪市北区中之島(なかのしま)に、関西電力の子会社・関電不動産開発が2023年夏に販売開始した「シエリアタワー中之島」という46階建てタワマンがあります。 これは土地の所有権がない、定期借地マンションであったにもかかわらず、最上階の168平方メートル(約51坪)の住戸が4億3999万円をつけて話題になりました。 坪単価は863万円です。 このマンションは2026年3月に引き渡し予定、定期借地権の期限は2098年ですから、およそ70年間借りたあとは、建物を解体・撤去、更地(さらち)に戻して土地所有者(関西電力)に返さなければなりません。 それでも、大阪都心部の一等地ということで、反応が良いようです。
◆中古物件でも1億円超え では、販売数が限られる新築マンションではなく、中古マンションで1億円を超えるような物件はどれくらいあるのでしょうか。 2023年9月の中古マンションサイト・HOMES(ホームズ)から、東京23区内でどのくらいの億ションが売りに出ているのかを調べたのが下図です。 このサイトでは、同じ物件が複数の業者から売りに出されているケースがあるので、数値としては一部重複がありますが、だいたいの傾向を見るうえで参考になるでしょう。 港区は、住民の平均年収が23区のなかでもっとも高いと言われている通り、掲載数は256物件と突出していますが、千代田区、中央区を含めた都心3区だけでなく、渋谷区、新宿区、目黒区などで50戸以上の掲載数が確認できます。 また、タワマンが多数供給されている品川区や江東区は一頃(ひところ)、都心部と比較して割安感がありましたが、今や億ションエリアに入っていることが見て取れます。 下町エリアでも台東区の上野(うえの)近辺や墨田区の錦糸町(きんしちょう)近辺、どちらかと言えば戸建て住宅街の印象の強い杉並区や練馬区でも億ションが普通に登場するようになっています。 どこもかしこも億ションだらけ。それでも流通し、マーケットが成立しているところからも、もはや、「東京のマンションは億ションが当たり前」になったと言えるのです。 ※本稿は、『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。
牧野知弘
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