アグレッシブな姿勢を貫くことで勝利を呼び込んだブライソン・デシャンボーとメジャーの現場でみた松山英樹の飽くなきゴルフへの情熱【佐藤信人・内藤雄士の全米オープンアフタートーク】
ノースカロライナ州のパインハーストリゾート&カントリークラブ(No.2)で開催された第124回全米オープンゴルフ選手権。全米オープンならではの最後まで痺れる争いになった今大会は、ブライソン・デシャンボー(米)が2位ローリー・マキロイ(北アイルランド)に1打差の6アンダーで頂点に立ちました。 期待された日本の松山英樹選手も、2アンダー単独6位と大健闘。最後の最後まで、手に汗握る展開となった4日間を、ゴルフネットワークで解説を務めた佐藤信人プロと内藤雄士プロコーチに振り返ってもらいました。
■憧れのペイン・スチュワートが制したパインハーストNo.2で勝ったデシャンボー
――お二人ともお疲れ様でした。内藤さんは、パインハーストから帰ってすぐに解説に加わっていただいたのですが、まずは現地の様子からお聞かせください。 内藤 今回は、清水大成選手のコーチとして帯同し、「どうやってこのコースを攻略しようか」ということを清水選手と考えながら練習日から3日間滞在したんですけど、全米オープンの雰囲気を堪能してきました。 佐藤 メジャーの空気を味わえたというのは、実に羨ましい(笑)。 ――さて、改めてデシャンボーの優勝を振り返っていただきたいのですが。 佐藤 デシャンボーとマキロイが違う組でプレーしていたわけですが、できれば2人のプレーオフを見たかったというのが素直な感想です。デシャンボーを祝福する一方で、マキロイの気持ちも痛いほど分かるんで、複雑な気持ちです。 内藤 私も同じです。どちらが勝っても良かったんですが、佐藤プロが言うようにプレーオフが見たかったですね。あとは、コースの難易度が尋常じゃないくらい高くて、解説していても息が詰まるというか。あの難コースを攻略するトッププレイヤーの技の凄さというのを今回改めて感じましたね。それと、今回ドライビングディスタンス1位(デシャンボー)と2位(マキロイ)が、最後まで優勝争いをしたというのも、時代を象徴しているような気がしました。 ――試合を振り返って、優勝を分けた1打というのは? 佐藤 あれだけ素晴らしいパットを決めてたマキロイが、上がり3ホールで2度、短いのを外しましたよね。それも60cmぐらいのパットを。一方、デシャンボーは常にアグレッシブに戦って、ショートパットのミスは1つありましたが、そのほかの取りこぼしがなかった。ミス1回と2回。その1回が2人の差になったのかなと。それと、最後のバンカーショットですね。55ヤードのバンカーショットは本当に凄かった。 ――その前の、デシャンボーの18番のセカンドショットのマネジメントに付いてはどう思われました? 佐藤 結構ギャンブルショットだったと思うんですけど、その結果はともかく、デシャンボーがアグレッシブな姿勢を最後まで貫いたことが良かったですね。あれを横に出していたら、「あれ!? 最後だけ変わったな」ってことになりますからね。 内藤 私もそう思います。最終日、ドライバーショットがあれだけ悪かった中で、飛距離が出る分、セーフティーなマネジメントに切り替えることも考えられたわけですが、デシャンボーは攻め続けた。その気持ちの強さが、優勝につながったんじゃないかと思います。 ――ペイン・スチュアートに憧れて、そのスチュアートが制したパインハーストで優勝しましたが、その部分も彼のモチベーションになっていたのんでしょうか。 佐藤 ペイン・スチュアートに憧れて同じ大学(サザン・メソジスト大学/SMU)に入学し、初優勝した大会も同じ。さらに、スチュアートが全米オープン2勝目を挙げたパインハーストで2勝目を挙げるという不思議な巡り合わせ。そういうストーリーが見ている側にも感動を与えるし、優勝した瞬間の喜び方、派手なガッツポーズもスチュアートと被ってくる。ああいうシーンを見ると、本当いい優勝だったなと思いますよね。 ――お二人には、マキロイに優勝させてあげたいという気持ちもあったのではないでしょうか。 佐藤 個人的にはいろいろありますが、それよりもプレーオフですよね。マキロイは最後に短いパットを外し、デシャンボーの優勝が決まったあとは会見もキャンセルしてパインハーストをあとにしたそうですが、相当悔しかったと思いますよ。そのニュースを聞いて、2015年にジョーダン・スピースに敗れ、その翌年に優勝したダスティン・ジョンソンのことを思い出したんですが、マキロイも来年リベンジしてくれるといいですね。それがマスターズだったらなおいいんでしょうけど。 内藤 そうですね、マスターズで優勝すればキャリア・グランドスラム獲得になりますからね。その前にどの大会でもいいからメジャーを取らせてあげたいなっていうのはありますね。 佐藤 あの最後のツメの甘いところがね。あんなに強いのに、最後の最後に弱さを見せるじゃないですか。そこがマキロイの魅力でもあるのでしょうが、とにかく頑張って欲しいですね。