【毎日書評】新しい時代を生きぬくことができる人材「日本人3.0」の特徴とは?
「日本人1.0」とは
「日本人1.0」が大多数だった時期とは、安保闘争を経験し、政治の話を封印した池田内閣から、自民党を壊そうとした小泉内閣あたりまでではないかと著者は推察しています。 また、その人物層を形容してみると、「経済的豊かさの追求と、日本にしか存在しない“国際人”を夢見たガラパゴスの生き物」ということになるそう。 たとえば、「日本人(像)とは」をじつは知らず、「日本人は、理由なしに特殊で優秀だ」という言説を当たり前として肯定し、外国人に対して古典的な差別意識を持ち、物質的な豊かさを判断の基準としており、ナショナリズムの持つ優越感と外的拡張志向が強く、中流というカテゴリーを実感し、多様化は頭になく……他にもいろいろあるようですが、大雑把にいえば、そうした人たちを指すというのです。(27ページより)
「日本人2.0」とは
「日本人2.0」は、第1次安倍内閣から菅内閣まで。その流れは、グローバル適応を試みたのにあきらめてしまったシーラカンスのようだと著者はいいます。2000年に入って以降の日本社会は、陸に上がることを試みたものの適応できず、ふたたび海に戻ったシーラカンスのようになっているということ。 「失われた30年の低迷」という現実を横に置き、理想としての「日本人(像)とは」というイメージを持ってそれを積極的に肯定し、ナルシシズムの意識が強く、「美しい日本」という理想としての「日本人とは」から乖離した現実の日本人(像)を受け入れられず、環境変化を感じてはいるが変わりたくはなく、現実から逃避して「外は見ない」ことにしてしまい、中流カテゴリーに執着し、多様化に向かう現状を無視したい人──。おおまかにいえば、そういうことになるようです。 つまり「日本人1.0」と「日本人2.0」は、「『最新』の日本人になれない人」だということ。では、「日本人3.0」はどうでしょうか?(29ページより)
「日本人3.0」とは
「日本人3.0」が目につき始める時期は、判断停止と操縦不能の無機質、無感動、無責任な岸田内閣以降だと著者。 ・国境を意識しないサクラマス(川から海に出て大きくなって戻ってくる)、つまり、自己の成長のためにリスクを取れる人 ・いまの自分自身を信じて、突き進むことができる人 ・現実を直視し、事実としての日本的な思考や個人と組織の行動特性の理解を通して「日本人(像)とは」を把握して、それをコントロール・マネージできる人 ・日本人というバイアスを理解できる人 ・日本という国に参加するメンバーであって、「日本人(像)とは」は、日本人というvehicle(媒体・乗り物)であり、アイデンティティのひとつでしかないと思う人 ・「日本人(像)とは」を変えないために、どう変わるかを考えている人 ・国家という枠を必ずしも前提とせず、国家への参加意識を持つ人 ・理想と言われる日本人像に自分を寄せて個を失うのではなく、自ら日本人を体現して、個人で戦う人 ・平均値とカテゴリーを気にしない人 ・シェアなどで、新品でなくても中古品で問題ないと思う人 ・国家に意識を収斂させる物語への関心の薄い人。つまり、環境の多様化は歓迎であり、自分自身もメタ化(自分に対する認識を、さらに高次の視座から俯瞰して認知すること)してしまう人 (32~33ページより) 以上が、「日本人3.0」の特徴。過去との断絶を気にせず、いままで学んだことを意識的に否定する「脱学習」ができる人だということです。(31ページより) 以後は「政治・国家」「社会システム」「企業」「日本人」「メンタル」「判断と選択」について、「『日本人3.0』の必須知識」が解説されていきます。新しい時代を乗り越えていくために、読み込んでおく価値は充分にありそうです。 >>Kindle Unlimitedの3カ月無料キャンペーン【10/20まで】 Source: ワニブックスPLUS新書
印南敦史