2024年後半の成功作・失敗作…期待のヒーロー映画で残酷なほど明暗
ソニー配給作品では、『ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US』が予想を上回るヒットとなった。ロマンチックコメディーのように始まるが、物語はやがてDVという暗いテーマに移行していく。製作費は2,500万ドル(約39億円)、世界興収は3億5,000万ドル(約543億円)。原作がもう1作あるので、普通ならばすぐさま続編をとなるところながら、公開時からあった主演のブレイク・ライヴリーと監督兼共演者のジャスティン・バルドーニの不仲説が今や訴訟沙汰にまでなってしまい、その希望は絶たれた。この舞台裏の話は壮絶すぎて、映画そのものより興味深い。
さて、次にがっかりだった作品を見てみよう。最初に挙げられるのは、やはり『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』だろう。2019年の『ジョーカー』は、5,500万ドル(約85億円)というスーパーヒーローものとしては低い予算で作られ、R指定のハードルがあったにもかかわらず、10億ドル(約1,550億円)を売り上げてみせた。オスカーにも作品賞を含む11部門で候補入りし、主演男優賞と作曲賞を受賞している。しかし、この続編は1億9,000万ドル(約295億円)の予算に対し、全世界で2億ドル(約310億円)しか売り上げなかった。宣伝費などを考慮すると、完全な赤字。賞レースにおいても期待できない。
スーパーヒーローものでは、ソニーの『クレイヴン・ザ・ハンター』も大コケだった。製作費は1億1,000万ドル(約171億円)、全世界興収は現在までにわずか4,400万ドル(約68億円)。アーロン・テイラー=ジョンソン、ラッセル・クロウ、『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』の悪役として光ったフレッド・ヘッキンジャーなどキャストは豪華なだけに、なんとも残念だ。
名監督の野心作にも、思ったようにいかなかったものがある。その一つは、フランシス・フォード・コッポラ監督の『メガロポリス(原題) / Megalopolis』。アダム・ドライヴァーをはじめとする素晴らしいキャストを揃え、カンヌ国際映画祭という華やかな場でお披露目されたが、製作費1億2,000万ドル(約186億円)に対し、世界興収はなんと1,300万ドル(約20億円)という驚くほど低い数字にとどまった。 また、ジェイソン・ライトマン監督の『サタデー・ナイト(原題) / Saturday Night』も、製作費3,000万ドル(約47億円)に対し、全世界興収980万ドル(約15億円)とかなり厳しい。今年50周年を迎えた大人気コメディー番組「Saturday Night Live」の初回の舞台裏を描くもので、この番組に愛着があるアメリカ以外では難しいかもしれないことはわかっており、賞レースに絡むかどうかが決め手だったのだが、今のところそこでも苦戦。評価自体は悪くないが、日本公開の希望は薄れていっているように思われる。