コロナ禍では無所属で孤独な練習に耐える日々も… ラグビー日本代表、李承信が持ち続ける強固な「信念」はいかにして作られたのか?
個人技のようで個人技ではなかった。 9月15日、東京・秩父宮ラグビー場。パシフィック・ネーションズカップの準決勝で、日本代表の李承信が魅したシーンは後半4分にあった。 【動画】パシフィック・ネーションズカップ準決勝・サモア戦ハイライト 身長176センチ、体重86キロで飄々とした顔つきの23歳は、自陣10メートル付近右で味方がターンオーバーするや次の攻撃ラインを設置。まもなくパスをもらい、真っすぐ走り出すように見せかけ右足でボールを転がす。防御の虚をつく。 立ち止まらない。長田智希が右タッチライン際を駆け上がり、弾道に追いつくところへサポートにつく。敵陣中盤で折り返しを受ける。タックルを食らいながら、後ろ手で球を放る。近くにいた下川甲嗣へ繋ぐ。トライ! 瞬時に美技を連発した李は、直後のコンバージョンも決めた。スコアを35―13とした。 その流れを本人は、「自分ひとりの判断ではなく、ラインとしていい判断ができた」。素早い連係の産物であると強調した。外側のウイングにいた長田の声を聞けたことで、空いたスペースに楕円球を運べたというのだ。 足技でのスコア演出は、他の局面でも披露した。長田のフィニッシュをおぜん立てした前半16分のキックは、相手の強烈なタックルを食らうのとほぼ同時に繰り出している。視野の広さと逞しさを同居させた。 この日はグラウンド最後尾のフルバックで先発しながら、途中から本職で司令塔のスタンドオフでプレーした。ノーサイド。49―27で決勝進出。自身はプレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた。 進歩をアピールするのに先立ち、日々の積み重ねを養分にする思いを明かしている。 「自分は、テストマッチ(代表戦)レベルのプレーヤーではないですし、経験が必要な時期だと思うので、一つひとつのテストマッチを通し、プレッシャーのなかで自分がどれだけ高いパフォーマンスができるかを意識していますね」 昨秋のワールドカップフランス大会でスコッドに加わるも、出場時間は全4試合で計4分のみ。悔しい思いをしただけに2027年のオーストラリア大会へ「出場したい気持ちは強い」のだが、着実に力をつけるのが先だと訴える。足元を見つめる。
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