若者全員が投票に行っても高齢者の票数に及ばない…老化ニッポンの「厳しすぎる現実」
ドメイン投票法も検討すべし
他方、「年齢枠」の創設と並んで、次世代の権利と利害を保障するためにドメイン投票法の導入も検討すべきだ。 ドメイン投票法とは、まだ投票権を持たない子供の親に、子供の人数分の投票権を追加して与える仕組みである。例えば、18歳未満の子供が2人いる世帯なら、両親は自分の分を含めた4票を投じられるといった形だ。男の子のぶんを父親が、女の子のぶんを母親が投票するようにしてもよい。 2票を持つことになる親に対しては、1票は自分自身の考えを基に投票し、もう1票は子供の将来を考えて投票するよう求めるのである。 2015年に公職選挙法が改正されて投票年齢が18歳に引き下げられたが、そもそも若い世代は人数が少なく、2歳の引き下げくらいでは有権者人口の年齢シェアが大きく変わることはない。「若者の声を国政に届ける」という意味においては焼け石に水だ。 これに対して、ドメイン投票法なら、一気に「0歳」まで有権者を拡大するようなものである。子育て中の両親の多くは20代~40代なので、「シルバー民主主義」は実質的にかなり改善されるだろう。 ドメイン投票法については、ドイツなどで検討されたことがあるが、実現には至らなかった。子供のいない有権者との公平性など課題は多く改良すべき点もあるが、少子化スピードが速い日本でこそ、子育て中の人々の意見を汲み上げる仕組みが必要なのだ。 これくらいの抜本的な選挙制度改革をしなければ、高齢者向けの政策を優先しがちな現在の流れは止まらず、ますます若い世代の政治離れが進むこととなろう。それこそ「社会の老化」を助長することに他ならない。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、多くの人がまだまだ知らない「人口減少」がもたらす大きな影響を掘り下げる。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)