電動キックボード「LUUP」なぜ躍進? 購入トレンドは「特定小型原付」より「原付一種」!? 乗るとわかるLUUPのストレスとは
●ユーザー動向は「乗り心地」を重視する傾向に
法改正後の業界動向をつかんだところで、ここからは車種のラインナップや性能、価格といった車両そのものの直近のトレンドについて、神奈川県・川崎市に本社を置くメーカー、SWALLOW合同会社の金洋国代表の協力を得ながら解説します。
まず、電動キックボードには「特定小型原付」と、免許&ヘルメット必須の「原付一種」「原付二種」の3タイプの車両があります。 大きな違いは法定速度で、「特定小型原付」は時速20km、「一種」は時速30km、「二種」は時速60kmです。また、「特定小型原付」には電動キックボードのほかに、販売数はまだ少ないものの「着座型の二輪」があります。 SWALLOWは、その全タイプの車両を扱う数少ないメーカーのひとつ。金代表は、「昨年、最も売れたのは『特定小型原付』の電動キックボードでしたが、今年に入り、『原付一種』のキックボードを買うお客様の方が多くなってきた」と言います。なぜでしょう? 「複数のお客様から聞いた話では、『特定小型原付だと遅すぎる』『以前(特定小型原付の)LUUPに乗ったけど次々と自転車に抜かされるのが嫌だった』など、『特定小型原付』の法定速度に物足りなさやストレスを感じる方が多かったです」(金氏) SWALLOWが取り扱う特定小型原付『ZERO9 Lite』の販売価格は13万9800円、一方の原付一種『ZERO9』は14万9800円と、価格差はわずか1万円でした。移動手段としての手軽さや安全性、スピード感や爽快感など、何を優先するかで選択肢が変わってきそうです。 続いて、電動キックボードは「車種によって乗り心地がかなり変わってくる」と金氏は言います。その理由は、タイヤにありました。電動キックボードのタイヤは、大きくは内部に空気が入った『エアタイヤ』と、空気が入っていない『エアレスタイヤ』の2種に大別されます。 「『エアタイヤ』はクッション性が高く、乗り心地がいい反面、空気圧の点検や充填といったメンテナンスが必要で、怠るとパンクしやすいというデメリットがあります。 『エアレスタイヤ』は空気充填の必要がなく、パンクしないという利点がありますが、タイヤ自体が硬質なゴムでできているため走行時の振動が身体に伝わりやすく、グリップ性も優れていないので、濡れた路面では滑りやすいというデメリットがあります」 市場に流通している電動キックボードは、「エアタイヤとエアレスタイヤで二極化しているのが現状」と金氏はいいますが、前述のシェアリング大手「LUUP」の車両は、「『エアレスタイヤ』の方を採用している」とのこと。 「一般的に、シェアサービスの車両は不特定多数の方が高頻度で利用するため、乗り心地よりもパンクのしにくさを重視する傾向が強い。また『LUUP』の車両は、販売用では主流の折り畳み式ではないのですが、これも、可動部が多ければ多いほど故障しやすいというリスクを回避する狙いがあってのことだと推察できます」 SWALLOWでは乗り心地を重視し、すべての取扱い車種について『エアタイヤ』を採用しているとのこと。事業者によっても判断が異なるタイヤの仕様。ここは車両選びの際には留意すべきポイントとなります。 ここまで、電動キックボードの普及の背景から市場の最新動向、車両のトレンドまでを取り上げてきました。後編記事では、違反者急増が火種となり、批判ムードが高まる電動キックボードの行く末と、「特定小型原付」のなかでも今後の成長性が最も高いと見込まれる新たなモビリティの動向についてレポートします。
興山英雄