離島の公立小、配布したノートPCで「休み時間にゲームをしてもいい」のはなぜ? スマホを手に入れる前によき使い手に、「今が学べるチャンス」
チャット機能も大いに役立っている、連絡事項がすぐに伝えられるし、ファイルやリンクの共有も簡単。今やそれなしでは考えられないほどだ。 6年1組で、記者が「どんな風にチャットを使っているか聞かせて」と頼むと、何人もの子どもたちが集まってきた。1人の女子児童にチャットの画面を見せてもらうと、クラス全員が入ってやりとりをするグループのほかに、「ゲーム仲間」など、趣味が同じ友達で作ったグループがいくつも並ぶ。 女子児童は、友達に話すようにこう教えてくれた。「よく使ってる。家に帰ってからもチャットできるし。ゲームの話が多くて、長いときは30分ぐらい。けんかが起きたことはあるけれど、あんまりないかな」 ▽大事に至るリスクが少ない間に学ぶ 古矢先生は、チャットを含め、学習用ノートパソコンの利用を巡るトラブルは今も皆無ではないと明かす。ただ、何か問題が起きたら先生に相談するという雰囲気があり、深刻な事態には発展していないという。「もちろん、気付いていないこともあると思いますけどね。ただ、普段から頭ごなしに怒らないよう気を付けています。信頼できる大人じゃないと、相談はできないから」
また、三根小では、端末の利用にあたって子どもから同意書を取っており、その中には「教員と保護者が、違法・不適切な使用をしていないことを確認することがあります」といった一文が入っている。実際、チャットの中で、児童が相手を罵倒するような言葉を繰り返すようなら、教育委員会側から学校に連絡が入るような仕組みもあるという。 その話を聞いて、記者は気になった。トラブルに対処する必要性は分かるが、一方で、子どもにとっては、チャットの内容を勝手に見られる可能性があるということだ。 「それは管理ではないのですか」。そう聞くと、古矢先生は考え込んで、言葉を選びながらこう答えた。「普段から使用状況をチェックすることはないし、そんな時間もない。ただ、子どもたちにまだ知識がない分、見守らなくちゃいけない面はある。本当に問題があったときだけ、というスタンスだったら、折り合いが付くんじゃないか。言い方は難しいけれど」。実際の運用は、携わる大人の倫理観に大きく左右されるのが現状のようだ。
古矢先生は、三根小学校のような取り組みが、どこの学校でもうまくいくかどうかは分からないと断りつつ、こうも言った。「小学校は、学べるチャンス」 中学校や高校だと、多くの生徒が私物のスマートフォンでやりとりをするが、小学校では自分専用の端末が学習用ノートパソコンだけという児童も多い。しかも、ノートパソコンは八丈島の小中学校以外とはつながれない設定で、何らかの失敗をしても大事に至るリスクが少ない。 小学生のうちにデジタル世界の注意点を学び、積極的に使い、時に失敗しながらも、お互いを尊重し合う振る舞いを身に付けてほしい。古矢先生はそう願っている。