離島の公立小、配布したノートPCで「休み時間にゲームをしてもいい」のはなぜ? スマホを手に入れる前によき使い手に、「今が学べるチャンス」
▽ルールを押しつけるのではなく、対話を大切に そのデジタルシティズンシップ教育に、三根小学校も全校で取り組んでいる。古矢先生が6年1組で「パソコンの気持ちのいい使い方」を考えた授業もそうだ。 低学年では、パソコンを大切に扱うといった基本から始める。そして、デジタル世界での活動には履歴が残ること、著作権の問題、オンライン上のコミュニケーションの利点と欠点などを、発達段階に合わせて学ぶ。 そうした知識は、たとえデジタル機器やアプリの活用に習熟した児童であっても、往々にして不十分なのだという。保護者向けの講演会を開催することもある。 また、デジタル世界では、SNSの例のようにジレンマが生じるケースも少なくない。だからこそ、ルールを押しつけるのではなく対話を大切にし、子どもの自律を促そうとしている。 古矢先生によると、三根小学校での導入のきっかけは2020年秋、学習用ノートパソコンが児童に配られた直後から、問題が頻発したことだった。登下校中にカメラ機能で知らない人を勝手に撮影したり、他人のアカウントを乗っ取っておかしな書き込みをしたり。保護者からも「家でゲームばかりしている」といった苦情が届いた。
三根小学校ではパソコンを授業でもそれ以外でも積極的に利用してもらおうと、毎日持ち帰らせて、子ども同士のチャットも制限していなかった。問題が起きるとパソコンを取り上げる先生もいたが、古矢先生は「そんなことをすると、子どもたちが使わなくなる」と異なるアプローチを模索し、デジタルシティズンシップ教育にたどり着いた。 ▽人前では発言しにくい子がパソコンを通して自分を表現 それから3年。三根小学校では学習用ノートパソコンの日常的な活用が定着した。古矢先生は、その意義が「めちゃくちゃある」と実感している。「例えば人前では手を挙げたり発言したりしにくい子が、パソコンを通して自分を表現できる。絵を描くのが苦手な子が、アプリを使えば描く喜びを感じられる。学びの間口が広がった感じ」 先生たちが、児童のアイデアに驚かされることも多い。取材に訪れた日の給食の時間。3年生の教室では、ある児童が学習用ノートパソコンのオンライン会議の機能を利用して、廊下に置かれた給食缶の中身を「中継」していた。配膳時にセットしておけば、教室の電子黒板で中継映像が見られ、廊下に出なくても、残りの量を確かめられる。せっかくおかわりに行ったのに、給食缶をのぞき込んでがっかりすることがなくなり、子どもたちは喜んでいるという。