離島の公立小、配布したノートPCで「休み時間にゲームをしてもいい」のはなぜ? スマホを手に入れる前によき使い手に、「今が学べるチャンス」
疑問に答えてくれたのは、この日、アドバイザーとして三根小学校を訪れていた一般社団法人メディア教育研究室代表理事の今度珠美さん。「情報通信技術(ICT)のよき使い手になるには、子ども自身が考え、自分なりの答えを見つけることが大事なんです」 今度さんは長年、メディア、特にインターネットとの向き合い方について「教え込む」側だった。子どもや保護者への講演を重ねる中で重視していたのは、ネットに潜む危険に、不用意に近づかないよう呼びかけること。小中学校や高校の先生の多くは、そうした話を歓迎した。 しかし、今や私たちの暮らしは、デジタル世界と切っても切れなくなっている。 SNSとの向き合い方をテーマにしたときのこと。使いすぎによるさまざまな問題点や危険性を伝え、解決策を生徒に書かせると「利用時間を減らす」「すぐに返信しないようにする」といった「正論」が並んだ。そこで、ある生徒に「使いすぎ、減らせそう?」と聞くと「減らせない」と返ってきた。
今度さんは返答を聞いて「そうだよね」と思い、こう考えるようになった。「SNSを頻繁にチェックしないと、例えば友達の情報が入ってこなかったり、悪口を言われたりする。やめたいと思ってもやめられない。そのジレンマを抜きにして、『正しい』答えを書かせることに、どれだけの意味があるのだろうか」 ▽子どもたちが自分事として向き合えるように そんなときに出会ったのが、欧米で広がっている「デジタルシティズンシップ教育」だった。その目的は、デジタル世界でお互いを尊重し、法的にも倫理的にもよりよく振る舞うのに必要な力を育むこと。「デジタル世界の怖さや危険性を強調するよりも、活用することを前提に、人権を守るよき使い手になることを目指す。そのスタンスが新鮮だった」と今度さんは語る。 今度さんの講演は変わった。SNSについて扱うときも、まずは活用したらどんなメリットがあるかを確認し、その上で、ジレンマについて考える。すると、子どもたちから「投稿を減らしたら悪口を言われる」などといった本音が出てくるようになった。一人一人の価値観や使い方の違いに気付くことで、ではどうすればいいのかという問いに、子どもたちが自分事として向き合えるようになったという。