沖縄独自の着る文化:「かりゆしウェア」が示す郷土愛とアイデンティティ
続いてオレンジのタグは、沖縄在住のデザイナーさんの団体『一般社団法人ファッションデザイナークラブ琉球』の方々がデザインしたものにつけられます。
伝統工芸と書かれたタグは経済産業省が認定する、伝統的工芸品に使われるかりゆしウェアのタグです。具体的には、紅型や琉球絣(りゅうきゅうかすり)、読谷山花織(よみたんざんはなおり)などのかりゆしウェアには、こちらのタグがつきます。
最後は、経済産業省の認める伝統的工芸品にはまだ至らない、比較的新しい工芸品はこちらのタグです。具体的にはうらそえ織などですね」
こうして名称や定義が統一されたことで、かりゆしウェアが一気に普及していった……かと思えばそんなことはなく、その後もかりゆしウェアの存在が県民に認知される機会はなかなか訪れなかった。 「一般的なYシャツに比べると値段が割高だったこともあって、70年代から90年代にかけては広く普及することはなかったですね」
「沖縄サミット」を機に知名度が急上昇。ビジネスシーンや冠婚葬祭での着用が一般的に
2000年、かりゆしウェアに大きな転機が訪れる。沖縄県で開催された主要国首脳会議、通称「沖縄サミット」だ。 「沖縄サミット開催を機に、観光地・沖縄の雰囲気を醸成する意味でかりゆしウェアを着ましょうといったことが県で提唱されたんです。 その流れで沖縄県工業連合会や行政、各市町村の議会、金融機関などが、これまで私服として着られていたかりゆしウェアをオフィスで着用することを認めたのが大きな変化でした。 その後、朝ドラの『ちゅらさん』(2001年放送)ブームでドラマに登場したゴーヤー柄のかりゆしウェアが話題になったり、沖縄出身のアーティストや俳優さん、タレントさんなどがフォーカスされたりして、沖縄に関連するもののひとつとしてかりゆしウェアの注目度も高まっていきました」
2000年以降、かりゆしウェアはビジネスや冠婚葬祭などの場面で、沖縄県民の夏の正装として急速に普及していく。特に仕事着として着用されるのが一般的になってからは、デザインや形、素材などもビジネス向けに進化していったという。