「定型を廃したラブレターの先に」『地面師たち』 大根 仁(監督)インタビュー
世界同時配信中のNetflixシリーズ「地面師たち」。 監督を務めたのは、実際に起こった「積水ハウス地面師事件」にすぐさま関心を持ち、原作小説を見つけ出し、一気読みの勢いのまま映像化の企画書を書いたという大根仁さん。 【関連書籍】『地面師たち』
世界同時配信中のNetflixシリーズ「地面師たち」。監督を務めたのは、実際に起こった「積水ハウス地面師事件」にすぐさま関心を持ち、原作小説を見つけ出し、一気読みの勢いのまま映像化の企画書を書いたという大根仁さん。 その運命的とさえ言える出合いや、「原作もの」に携わる際の心構え、俳優たちのキャラクター造形についてお聞きしました。 構成/安里和哲 撮影/山本佳代子
なにかに呼ばれている気がした
――「地面師たち」、とにかく面白かったです。 大根 本当ですか、よかったです。完成したのは三週間前なのですが、感想が聞けてホッとしています。今作は、どの取材でもライターさんたちの興奮が伝わってくるので、これは噓じゃないなと確信しました。取材時の雰囲気で、その興奮が本気かどうかってわかるんですよ(笑)。 ――私の言葉にも噓はないです(笑)。地面師詐欺の契約シーンの緊張感と、リアリティとエンターテインメントの絶妙なバランス、気品と残虐性を兼ね備えた詐欺の首謀者・ハリソン山中をはじめとするキャラクターなど、あらゆる要素がハマっていました。大根さんは今回初めて「世界同時配信」となる作品を制作されましたが、新たなチャレンジにあたって参照した作品はありますか? 大根 具体的にどの作品が、ってことはないですね。ただ、ここ数年は海外ドラマを熱心に観ていたので、そこはひとつの目標でした。特に「トゥルー・ディテクティブ」のシーズン1や「チェルノブイリ ―CHERNOBYL―」「メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実」「マインドハンター」「FARGO/ファーゴ」シリーズなどの、ストーリーテリングが巧みで、情け容赦なく緊張感が持続する作品に迫りたいという思いはありましたね。 ただ、それは作品の構造という点における目標であって、内容を寄せるという意味ではありません。日本に暮らす自分たちが面白いと感じる半径一〇キロ以内の話が、世界に届くのが一番いい形なので。 ――本作のテーマになった巨額の地面師詐欺は、大根さんにとってまさに「半径一〇キロ以内」で起こった事件だそうですね。 大根 「積水ハウス地面師事件」の現場となった五反田の廃旅館「海喜館」は仕事場の近くで、毎日のようにその前を通っていたんです。あの旅館の独特な佇まいは、都会のエアポケットのようで妙な魅力を放っていたので、いつも眺めるに飽き足らず、写真もよく撮っていました。 そしたらある日、警察や報道陣でごった返していて、ニュースを見てあの事件を知りました。これは面白いフィクションが作れそうだとは思っていたんですが……あいにく僕にはオリジナル作品を作る才能がない。 そんなとき、事件現場と通りを挟んで向かい合った書店で、新庄耕さんの『地面師たち』を見つけて。その場で買って、一気読みした勢いのまま、映像化の企画書を書きました。 ――運命的な出合いですね。 大根 こんなこと滅多にないんで、なにかに呼ばれている気がしましたね。
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