ツンデレ鬼上司の正体は(顔を見てない)初恋の皇帝…! 無自覚に告白するヒロインを意識しまくる皇帝にキュンするしかない『金なる恋は後宮で』【書評】
勘違いで、はたまた運命のいたずらですれ違うふたり……というのは少女漫画の王道みどころ。そんな王道キュンを、かわいいふたりが届けてくれるのが『金なる恋は後宮で』(白藤圭/白泉社)です。
主人公の姚紅旭は、お城に使える女官。なのに小銭が落ちる音には即反応する、いわゆる「守銭奴」です。とあることがきっかけで、皇帝の弟である瑞星の世話をする女官に選ばれた紅旭。しかしその指令を下した武官は「無能なら後宮から出て行ってもらう」と彼女に対していつも高圧的な態度。何かとつっかかり、疑いの目を向けてきます。その理由は、なんと彼が実は皇帝・黄連鶴だから。弟を毒殺しようとした犯人を見つけるため、身分を隠して調査しているのです。 皇帝が即位したばかりの頃、紅旭の弟が流行病にかかってしまいます。お城に仕える前だった紅旭は弟を医者に見せるお金がなく、困り果てていました。その時、偶然通りかかった皇帝が自らの耳飾りを「質にでも入れろ」と紅旭にプレゼント。そのおかげで弟は助かったのです。 皇帝との出会いは顔もはっきりとわからないほど一瞬だったものの、その恩を忘れず、いずれは質に入れた耳飾りを買い戻し皇帝に返そうと考えていた紅旭。彼女の徹底した守銭奴ぶりは耳飾りを購入するお金を貯め、皇帝に再び会う日を夢見てのものでした――。
そんな経緯から始まるこの物語、一番の見どころはふたりのすれ違う「両片思い」です。武官=皇帝と気づかず、事ある毎に皇帝への気持ちを語る紅旭。自分では気づいていないものの、その姿は初恋の人への憧れを語る姿そのものです。紅旭は庶民の出ということで実は宮廷でいやがらせを受けるなど苦労する場面も。それでも本人はそれを気にせずけなげに皇帝を思い、彼のためにお金を貯めます。そんなまっすぐな姿を見ると、彼女を応援したくなります。 一方連鶴はそんな紅旭にときめきつつ、自分の気持ちが恋とは気づかずモヤモヤ。自分の胸がドキドキしている事実を、「本能が紅旭を危険だと察知しているせいでは」と考える姿はちょっと笑ってしまいそうになりますが、弟の安全を第一に考えているのだなと思うと好感度アップ。どこまでも真面目な連鶴がだんだんかわいく思えてきます。
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