NHKが「紅白歌合戦」に出場させたい歌手が一目瞭然…業界関係者が「歌手別視聴率」に注目する理由
歌手別視聴率
23日に出場歌手の曲目が発表され、今年も「この番組」の季節になってきた……と言いたいところだが、若者を中心に“テレビ離れ”が進み、年々視聴率がダウンしている「NHK紅白歌合戦」。 【写真】紅白で高い『歌手別視聴率』を出したアーティストたち 1988年(第39回)は、平均世帯視聴率53.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)という高視聴率を獲得し、2部制となった89年(第40回)以降、90年(第41回)から99年(第50回)まで2部は毎年50%を超えていた。06年からは「前半」と「後半」となったが、昨年は前半29.0%、後半31.9%で、ともに2部制以降ワーストを更新してしまった。 ワーストとはいえ、それでも多くの視聴者がおおみそかにNHKを見ていることは事実ではある。今回はNHKはじめ各テレビ局や広告代理店など、業界関係者が高い関心を寄せる数字に注目したい。それは「歌手別視聴率」である。その歌手が登場した時の視聴率を示したものだ。この数字を分析してみると、NHKが紅白に歌手を起用する理由も見えてくるという。 「番組全体の視聴率まで大きく押し上げる、高い歌手別視聴率を期待できる歌手は貴重です。活動休止中の嵐の紅白復帰ステージ、SMAPの一夜限りの再結成、引退した安室奈美恵さんの復帰ステージなど、毎年、年の瀬になるとこうした話題が出ますが、特にこの3組は、21世紀の紅白を振り返れば、確実に数字が取れるという根拠があるのです」(テレビ局関係者) では、21世紀紅白の歌手別視聴率を振り返ってみよう。
SMAPは紅白に強い
まず24年は特別企画枠で出場する氷川きよし(47)。21世紀元年となる2001年(第52回)の歌手別トップは、デビュー2年目の氷川と、当時人気だった男性デュオ・CHEMISTRYが52.4%で分け合った。 「氷川さんはデビューから2年連続の出場となり、“演歌界のプリンス”としてまさに期待の星でした。出番は2部の序盤で『大井追っかけ音次郎』を歌唱。名付け親であるビートたけしさんと故志村けんさんが駆けつけてステージを盛り上げました。昨年まで、演歌歌手でトップ10入りの常連は、石川さゆりさんぐらい。そんな中、氷川さんはデビューした00年から活動休止前の22年までの23回出場のうち、トップ10入りを8回も果たしています。活動を再開した今年に出演するのも納得です」(ベテラン芸能記者) 2002年(第53回)には、紅白出場を辞退し続けて来たシンガー・ソングライターの中島みゆき(72)が富山・黒部ダムから中継出演した。当時、人気を集めていたNHKのドキュメンタリー番組「プロジェクトX~挑戦者たち~」の主題歌「地上の星」を熱唱。歌詞を間違えるハプニングがあったものの、その瞬間にテロップを消す制作陣の“ファインプレー”も話題になり、52.8%で歌手別トップを記録した。 そして翌03年(第54回)、12回目の出演となったSMAPが、大トリで同年に大ヒットを飛ばして代表曲となった「世界に一つだけの花」を歌い57.1%%を獲得。00年以来、3年ぶりで初の単独での歌手別トップ(00年は小林幸子、小柳ゆきとタイ記録)を記録した。 「03年の歌手別2位は、美川憲一との豪華衣装対決で盛り上げた小林幸子さんで50.6%でしたが、SMAPは6.5ポイント差で圧勝でした。以後、13年までに大トリを6回務め、出場23回のうち8回の歌手別トップを記録しています。全体的に紅白の視聴率がダウンし始めた09年以降も、5年連続で48%超えを記録するも、最後の出場となった15年は41.2%でした。SMAPは16年に解散しますが、紅白では本当に強かった。熱心なファンの間で“紅白で復活を”と願う声が多いのもそのせいでしょう」(同前) 04年(第55回)はSMAPが「新曲リリースがなく、コンサートも行わなかった」との理由で出場辞退。それもあり、紅組のトリで大トリでもあった小林、そして紅組トリ前の天童よしみ が46.0%でトップを分け合った。 「NHKが紅白の制作費をめぐる不祥事を受け、同年の紅白出場希望歌手の世論調査結果を発表したところ、1位は氷川さんでSMAPは2位でした。ガチンコ投票の結果でしたが、所属する旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)が激怒して辞退したと言われました。おかげで05年は大トリに据えるしか選択肢がありませんでした」(同前) 05年(第56回)から07年(第58回)まではSMAPが3年連続視聴率トップを獲得したものの、06年(第57回)と07年(第58回)は2年連続で後半の視聴率が40%を切ったためNHKは08年、ついに“禁じ手”に打って出た。 08年(第59回)の歌手別トップは、フジテレビ系のバラエティー番組「クイズ! ヘキサゴンII」から誕生し、“おバカタレントブーム”を巻き起こした、ユニット「羞恥心」(つるの剛士、野久保直樹、上地雄輔)の楽曲メドレー「羞恥心~陽は、また昇る 紅白スペシャル」が47.8%を記録した。 そして、09年(60回)、デビュー10年目の嵐がファン待望の初出場。「嵐×紅白スペシャルメドレー」を披露し、歌手別視聴率では6位の43.2%を記録。この年のトップはDREAMS COME TRUEで50.1%だったが、以後、紅白は“ジャニーズ祭”のような様相を呈することになる。 「08年までは、厳格にレコード会社ごとの出場枠が決まっており、その関係で旧ジャニーズ勢はSMAPとTOKIOのみが出場していました。ところが、09年は4組。以降も増え続け、関ジャニ∞(現SUPER EIGHT)、Hey! Say! JUMP、King & Prince、SixTONESSnow Manら続々とCDデビュー組が出場するように。最も多い15年(第66回)は35周年の近藤真彦、メンバーの井ノ原快彦が白組司会を務めたV6まで出場し、旧ジャニーズ史上最多の7組に達しました」(レコード会社関係者) NHKの紅白制作陣と旧ジャニーズとの蜜月関係が続く中、13年(64 回)は50回目の出場での勇退を発表し、代表曲「まつり」を熱唱した演歌界の大御所・北島三郎(88)が唯一の50%超えとなる、50.7%でトップ。しかし、当時人気の絶頂期を迎えていたAKB48の中心メンバー・大島優子(36)がサプライズで卒業を発表。賛否両論が巻き起こり、北島の勇退に水を差してしまった。 そのAKBは10周年を迎えた15年(第66 回)に「AKB48 紅白2015 SP~10周年記念メドレー~」を披露し43.4%でトップを記録。しかし、すでに、勢いは下り坂で、19年(第70回)に12回目の出場を果たすと20年(第71回)に落選。20周年の来年の返り咲きがなるか注目される。