【AI生成物に埋もれるコンテンツ】経済的利益はクリエイターではなく、流通を握るプラットフォーマーに
クリエイターではなくプラットフォーマーに流れる経済的利益
インターネットが普及する前は、業界ごとに縦割りで流通市場が形成されていましたが、それらがジャンルを問わずインターネットに流れ込みました。 その経済的利益は、クリエイターやプロデューサーではなく、流通を握ったプラットフォーマーといわれる大手のネット企業にもたらされ、コンテンツの制作者たちは、経済的な苦境にあえぐことになりました。 すでにクリエイティブ産業の人たちは個人事業主として働いていることが多く、社会保険が手薄であり、低賃金で同時に複数の短期的な仕事をこなしながら自己PRに力を入れなければならない状況に追い込まれていました(*1)。この状況下で生成AIが登場したのです。 生成AIによるコンテンツ量はきわめて膨大です。Everypixel Journalに掲載された調査によると、画像生成AIが公開されてからおよそ1年間で150億枚以上の画像が生成されました(*2)。この量は、最初の写真が撮影された1826年から1975年までの150年間、写真家が撮り続けた写真の数に匹敵します。生成AIが生み出す量がいかに驚異的であるかがわかる数字です。 たとえ人が従来のテクノロジーを使って丁寧に作っても、生成AIのコンテンツに量的に埋もれてしまいます。インターネット上のコンテンツは、途方もなく増え続け、AI生成物で埋め尽くされてしまうに違いありません。 ただし、ここで忘れてはならないのは、生成AIがクリエイターの作ったコンテンツを読み込み、それをもとにして新たなコンテンツを出力しているということです。 生成AIの開発者や運営者、あるいはコンテンツをデータとして収集する業者ばかりに利益が偏ってしまい、クリエイターに報酬がもたらされないのであれば、それは是正しなければならないでしょう。 というのもクリエイターがコンテンツを作らなければ、それを読み込む生成AIは高度化しないからです。画像データや低品質の言語データはまだ枯渇しませんが、高品質の言語データは2026年にも枯渇するといわれています(*3)。 クリエイターによってコンテンツが多様に継続的に作られてこそ、AIのコンテンツも多様に、そして継続的に生成されていきます。良質なコンテンツがあってこその生成AIであることを忘れてはなりません。 *1 アンジェラ・マクロビ―(2023)『クリエイティブであれ』(田中東子監訳,中條千晴・竹﨑一真・中村香住訳)、花伝社 *2 Valyaeva, Alina (2023) “AI Has Already Created As Many Images As Photographers Have Taken in 150 Years”, Everypixel Journal(accessed 2024-05-31) *3 Villalobos, P., J. Sevilla, L. Heim, T. Besiroglu, M. Hobbhahn, and A. Ho (2022) “Will we run out of data? An analysis of the limits of scaling datasets in Machine Learning”(accessed 2024-05-31)