「駅徒歩20分」「70平米」で家賃30万円 “ゴーストタウン”報道も相次ぐ「晴海フラッグ」の賃料は妥当か
「キーボックス」の真実とは
一方で、物件の引き合いについては、部屋の条件によって差が大きいのだそうだ。 「100平米を超える部屋や、最上階の部屋など、プレミアムな物件は転売もすぐに決まっていましたね。中には1億円ほどで購入した物件が1.5倍の価格で売却成立するケースも見受けられました。一方、眺望の良くない物件などは少し苦戦している印象も受けます」(渕ノ上氏) 物件の近くで「多数のキーボックス」が見つかったという報道についても、不動産関係の仕事に就いている人なら「察しがついているはず」と話す。 「報道では民泊なのでは、と言われたりもしていますが、仮にあったとしても大量に存在している状況は考えにくい。話題の新築物件ですから、民泊という回転率が不安定な“事業”を行うより、賃貸に出した方が費用対効果は見込みやすいですし、そもそも民泊での利用は禁じられています。管理組合に見つかればペナルティを負うことになりますし、そんなリスクを冒してまで民泊に出すということは不自然さが否めません」(渕ノ上氏) では、いったい誰が、何のために――? 「物件見学用の鍵を入れていたと考えるのが自然です。あれだけの数があったということは、それだけ希望者が多く、それに伴う物件見学の希望者も多いと言えるでしょう」(渕ノ上氏) 駅から距離のある物件で、高頻度で内見申込があるとすると、毎度のように店舗に鍵を取りに戻るのはかなりの手間になる。褒められたことではないが、同じ方法で鍵の受け渡しが行われるケースは都内の別の物件でも見られるという。晴海フラッグ周辺は他に建物が少ないため、余計に特に目立ったということだろうか。
約7~800万円もの頭金が預けっぱなしだった
晴海フラッグは当初より、2年ほど時間をかけ、ゆっくりと満室にしていく計画だったという話もあるそうだ。では、現在募集中の賃料の水準は、妥当なのだろうか。 「私のお客さんの中にも、70平米ぐらいのファミリータイプの物件で、月額賃料30万円ほどですぐに入居者が決まった、というケースはありました。そうした例も実際にあるため、30万円が高すぎるとは思いません。交通の便にウィークポイントがあるのは事実ですが、バスの本数は十分で通勤に困ることはないと聞きます」(渕ノ上氏) ただ、これ以上の賃料が望めるかと言うと難しく、目先ではこれぐらいの水準で移行するだろうと見ているそうだ。 「階数や眺望にもよるのですが、35万円ではさすがに割高感が出てきます。逆に低層階でも28万円ほどであれば、値ごろ感があります。だいたいこれぐらいの相場感覚で少しずつ埋まっていくのではないでしょうか」(渕ノ上氏) 販売初期の“一期一次”で70平米ほどのファミリータイプの物件を購入した人の場合、物件価格は約7000万円だった。賃料30万円で賃貸に出せば、利回りは5%ほどになる。 「これほど駅距離のある物件で利回り5%を出せればかなりの好パフォーマンスの部類と言えるでしょう。物件価格が安すぎたという報道も目立ちますが、コロナによる凍結期間の存在や、本当に想定通り売れるのか、といった先行きの不安定さは、当時のマーケット環境を勘案すると否定できませんでした。高利回りを手にできる人は、一方で4年間もの間、約7~800万円もの頭金が預けっぱなしになっていた事実も考慮すべきでは」(渕ノ上氏) 住みたい人も、そうでない人も。完成前からこれだけ長きにわたり、多くの人々の心を奪ったマンションは、後にも先にも晴海フラッグだけかも知れない。 *** この記事の前編では、マンション価格が高騰する昨今、「賃貸物件の賃料」の今後の見通しについて、同じく不動産ナビゲーターの渕ノ上弘和氏に聞いた。
デイリー新潮編集部
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