原油弱気派に試練、イランの攻撃で戦争リスクプレミアム復活
(ブルームバーグ): イランによるイスラエルへのミサイル攻撃で、原油価格を巡り広く共有されていた弱気な見方が試される事態となっている。今回の攻撃で緊張がさらに高まれば中東からの供給が途絶しかねないとの懸念が浮上している。
イスラエルのネタニヤフ首相はイランによるミサイル攻撃に対して報復措置を講じる構えを見えており、攻撃の応酬が続く恐れもある。1日の攻撃の後、北海ブレント原油は5%以上急伸し、その後、上げ幅を縮小した。2日には再び上昇し、1バレル=74ドルを上回る水準で推移している。
イラン、弾道ミサイルでイスラエル攻撃-ネタニヤフ首相は報復誓う
ただ、アナリストやトレーダーによると、イランの石油施設が攻撃された場合や、同国政府がホルムズ海峡を封鎖した場合に、価格がさらに上昇するリスクを市場はまだ十分に織り込んでいない。
資産運用者やヘッジファンドは先月下旬時点では、需要と供給過剰への懸念から原油価格の先行きについて過去最も弱気なスタンスを取っていた。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」は12月から生産量をさらに回復させる構えで、それ以外の掘削業者も増産しているため、市場には十分な余裕がある。
ラピダン・エナジー・グループの社長で、ジョージ・W・ブッシュ政権で顧問を務めた経歴を持つボブ・マクナリー氏は「原油市場は極端にショート(売り持ち)に傾き、地政学的なリスクを軽視していた」と指摘。「エネルギーインフラやエネルギーのフローに直接影響するようなエスカレーションが見られた場合、あるいはイスラエルが体制を脅かす重要なインフラを攻撃した場合、原油のリスクプレミアムは上昇する一方だろう」と述べた。
イランは1日当たり300万バレル余りの原油を生産する。同国による攻撃は、イスラエルが最近レバノンに対し一連の攻撃を行ったことへの報復だった。OPEC加盟国であるイランは7月、イスラム組織ハマスの政治指導者がイスラエルによるものとされる攻撃でテヘランで殺害された後にも、報復を示唆していた。