株価のパフォーマンスと企業収益の「断ち難い関係」とは【資産運用のプロが解説】
【ファンダメンタル分析】
バリュー投資家は株式の本源的価値の計算に多くの場合、配当割引モデルやそれを改良したモデルを用いているようです。 モデル自体はロジカルで容易に理解されますが、難しいのは先ほどのアナリストの仕事のように、モデルへの入力値を求める作業です。このモデルへの入力値を求めるプロセスはファンダメンタル分析と呼ばれます。調査、分析は様々で、前述した著名な投資会社以外にも、人を重視する投資家、業界動向(グローバルな)を重視する投資家も存在します。
【安全余裕率】
バリュー投資家は将来の利益を推定した後に、この将来利益の現在価値を求めます。これが推定される本源的価値ですが、この数値は入力された値の影響を受けます。特に割引率、成長率の推定値に影響されるので、通常の場合は本源的価値の取り得る値の範囲を考えることが多いです。Graham and Doddも投資家に対して「安全余裕率」(margin of safety)を使うことを勧めています。
【バリューの罠】
ディープ・バリュー(本源的価値と比べて極端に割安な株式)の投資家は、特売価格が付いた銘柄に投資しようとします。この場合(例えば、PBRが0.3倍であるとか)必ず次の問に答える必要があります。すなわち、本当に割安なのか、あるいは安いには真のファンダメンタルズが壊れかかっているために割安に放置されているのか、です。 株式市場には多数の人々が参加し株価には大量の情報が反映されています。従って、ある株式がもし割安に見えれば、通常それには理由があり、成長が平均以下になりそうなことを表しています。バリュー投資家が根本的な問題を抱えた会社に投資してしまうことを称してバリューの罠(value trap)と言います。バリューの罠は株式のクォリティ特性に注目することによって少なくとも部分的には回避できます。
【クォリティ投資】
バリュー投資が最も注目するのは株価ですが、一方でクォリティに注目する投資もあります。 「クォリティ投資とは」、簡単に言えば「良い」会社を買うことです。では、「良い」会社、つまり、クォリティの高い会社とは何でしょうか? 一つには、投資家が高い価格を払うのを厭わないであろう特性として、クォリティを定義できます。 通常の配当割引モデルを前提とすると高クォリティ特性(すなわち、より高いバリュエーションレシオを正当化する特性)は幾つかあり得ます。 -高い収益性(Profitability ≒ ROE) -高い成長率(Growth) -高い安全性(Safety) -高い配当性向(Payout) 市場効率性の信奉者はクォリティの高い企業が特定可能であることには、まず同意するでしょう。 しかし、市場が効率的であれば、そうした企業の株価は既に割高でその後の(リスクに対する)リターンは平均的なものになることが示唆されます。つまり効率市場仮説に立つと、高クォリティの会社への投資が低クォリティへの投資より優れているとは言えないと考えます。 対照的に、クォリティ投資家は、クォリティは完全には価格に織り込まれていないため、将来のリターンは平均以上であり、クォリティを見つけることは割りに合うと考えます。