株価のパフォーマンスと企業収益の「断ち難い関係」とは【資産運用のプロが解説】
【バリュー投資】
定義としては容易で割安と評価される株式を買い、更に場合によっては割高と評価される株式を空売りする投資スタイルです。考え方としては、著名なGraham and Dodd(1934)まで遡り、現代のWarren Buffetが代表的なバリュー投資家と言えます。 世間一般の通念に逆らって大部分の人からは好まれている株式の保有は避け、嫌われている株式を買うことですが、「言うは易く行うは難し」です。下落した、あるいは見向きもされない株式を買いにいくのですから自信と勇気が必要です。 実践する方法は様々で、本源的価値の定義、保有期間、ポートフォリオの構築方法(割安と信ずる銘柄だけに集中するのか、ある程度マーケットとの連動性を考慮するのか)などによって実践は異なります。 筆者が実際に目の当たりにしたバリューだけに投資する米国のBアセットマネジメント社ではアナリストに徹底した調査をさせることで有名でした。 ドット・コム相場(2000年当初のインテルの暴落で終焉を迎えるIT銘柄ブーム)のさなかに、割安に放置されていると思われる紙・パルプセクター担当のアナリストと面談したときのことです。彼女はある企業が保有するすべての製紙工場を訪問、調査しており色々な種類の紙製品ごとの製造原価、輸送コストを、工場のエンジニアへの取材も含めて知悉しているのでした。紙製造過程で使われる様々な装置・機械の型式等にも注目するのでした。(償却費用が整合的かなどをチェックするため)膨大な時間と調査の結果です。 また、各種の紙のユーザー(新聞紙、段ボール紙、コート紙、ティシューなど、紙にも様々な種類があるものです。)に直接あたり、仕入れ値、数量、ライバル会社の動静などを調べます。生産工程から最終市場まで。「紙パ」ビジネスの端から端までの内容を知らなければ投資はできないと語っていました。キャッシュフローの予測も5年以上にわたります。 徹底的な調査が売り物の投資運用会社ではありましたが、このような調査に対する態度を持ったアナリストが業種ごとに配置されているので、その内実は投資運用会社というよりも、シンクタンクといった様相でした。彼らは割安に放置されている銘柄を発見しては、綿密な調査の上で購入し、本源的価値に達するまで忍耐強く保有し続けるのです。 このような調査に資源をかけなくても、比較的単純にPBRやPERの低さに着目して投資するバリュー投資家も存在します。その代わり、クォンツ手法を発展、応用した手法が多いように思われます。