米戦争研究所、北朝鮮のウクライナ派兵で報告書 実戦経験を将来の紛争に応用 対中依存脱却の狙いも
【ワシントン=渡辺浩生】米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は2日までに、北朝鮮がウクライナへの侵略を続けるロシアを支援するため部隊を派兵した戦略的狙いについて報告書を発表した。朝鮮戦争以来となる通常戦争で得る最新の戦闘経験を、対韓国など将来の紛争に応用する目的があると分析。北朝鮮の対露連携強化は中国への依存を弱めることになり、朝鮮半島を含むアジア太平洋地域の長期的安定を脅かすと警告した。 報告書は1日付。北朝鮮は、「将来の戦争の性質を変える」とされるウクライナ戦争への参戦が「自国軍の重大な学習機会となる」と認識したと分析。背景として、北朝鮮軍は1953年の朝鮮戦争休戦以来、大規模な通常戦闘の経験がなく、「韓国のような高度な敵国との近代戦に準備されていない」と指摘した。 そのうえで報告書は、北朝鮮の部隊が西側の兵器供給を受けるウクライナ軍を相手に自らの兵器システムを試し、指揮統制、無人機操縦、電子戦の経験を積むことで「朝鮮半島を含む将来の紛争で優位に立つ」狙いがあると分析した。 報告書は、実際に北朝鮮軍が戦場で得る教訓を将来に生かせるかは、露軍司令部が北朝鮮の兵力をどのように利用するかで決まると指摘。露軍が北朝鮮兵を「大砲の餌食(弾除け)」として使えば犠牲が膨らむのは確実で、北朝鮮政府が望むような教訓は十分に得られないとの見方も示した。 さらに報告書は、北朝鮮がロシアとの連携を強化することで「中国への依存度を下げる」思惑があるとも指摘。中国政府の影響力が弱まれば、北朝鮮の攻撃性を制御できず、朝鮮半島を不安定化し、より広いアジア太平洋地域を危険にさらす可能性があると分析した。 一方、北朝鮮にとりロシアからの見返りには、核開発計画の進展に加え、「朝鮮半島で紛争が起きた際にロシアの軍事的関与を確かにしたい」思惑もあるとしている。